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077 : 咆哮の獅子
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一人旅というものを私は過去にしたことがあったのかなかったのかはわからない。
なんとも味気ないものだと感じながら、私はとにかく逃げるように町を出て、その先の町に向かった。
果樹園とドニスの農場でもらった賃金をそのまま手付かずで持っていたため、当座のことには困らないが、それもそう長いことではない。
なるべく節約をしながら旅を続け、クロワのいる町からある程度離れたら、何か、仕事をみつけようと私は考えていた。
気になるのはリュックのことだ。
私は、クロワだけではなく結果的にリュックのことも裏切る事になってしまったのだ。
海底神殿を探すという彼との共同の目的を…
しかし、今となってはもうどうしようもない。
これからは、クロワとリュックの旅の安全を祈る事くらいしか、私には出来そうにない。
*
私は、それからいくつかの町を通り過ぎた。
時には夜通し歩く日もあった。
やがて、ある町に着いた時のことだった。
「お客さんは、旅をしてるのかい?」
「そうなんですよ。」
「どこへ行くんだね?」
「どこということは決まってはいないんですよ。」
「そいつはうらやましいね。
気ままな一人旅ってわけだな。」
「…まぁ、そんな所ですね…」
「そうか。
もし、この先に行くのなら、しっかりと旅の準備をしておいた方が良いぞ。
この先は、しばらく、店はおろか泊まれる場所もないからな。
特に食べ物は多めにもって行っといた方が良いだろうな。」
「そうなんですか。
それは良いことを教えていただきました。
ありがとうございます。」
宿の主人の話によると、この先の町までは三~四日はかかるらしい。
たいした準備もなしに出発していたら、本当に困るところだった。
私は、次の日、町の雑貨屋で日保ちする食料を買い揃え、その町を後にした。
*
町を離れ、しばらく歩いた時に、後ろから聞こえて来る聞き覚えのある声に私は振り返った。
「マルタン~~!!
待ってくれよ~!!」
「マルタンさ~ん!」
手を振りながら走って来る声の主は、思った通り、リュックとクロワだった。
なんとも味気ないものだと感じながら、私はとにかく逃げるように町を出て、その先の町に向かった。
果樹園とドニスの農場でもらった賃金をそのまま手付かずで持っていたため、当座のことには困らないが、それもそう長いことではない。
なるべく節約をしながら旅を続け、クロワのいる町からある程度離れたら、何か、仕事をみつけようと私は考えていた。
気になるのはリュックのことだ。
私は、クロワだけではなく結果的にリュックのことも裏切る事になってしまったのだ。
海底神殿を探すという彼との共同の目的を…
しかし、今となってはもうどうしようもない。
これからは、クロワとリュックの旅の安全を祈る事くらいしか、私には出来そうにない。
*
私は、それからいくつかの町を通り過ぎた。
時には夜通し歩く日もあった。
やがて、ある町に着いた時のことだった。
「お客さんは、旅をしてるのかい?」
「そうなんですよ。」
「どこへ行くんだね?」
「どこということは決まってはいないんですよ。」
「そいつはうらやましいね。
気ままな一人旅ってわけだな。」
「…まぁ、そんな所ですね…」
「そうか。
もし、この先に行くのなら、しっかりと旅の準備をしておいた方が良いぞ。
この先は、しばらく、店はおろか泊まれる場所もないからな。
特に食べ物は多めにもって行っといた方が良いだろうな。」
「そうなんですか。
それは良いことを教えていただきました。
ありがとうございます。」
宿の主人の話によると、この先の町までは三~四日はかかるらしい。
たいした準備もなしに出発していたら、本当に困るところだった。
私は、次の日、町の雑貨屋で日保ちする食料を買い揃え、その町を後にした。
*
町を離れ、しばらく歩いた時に、後ろから聞こえて来る聞き覚えのある声に私は振り返った。
「マルタン~~!!
待ってくれよ~!!」
「マルタンさ~ん!」
手を振りながら走って来る声の主は、思った通り、リュックとクロワだった。
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