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ルカ(聖夜月ルカ)

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076 : 弓引く者

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 「じゃあ、今日も頑張りましょうね!」

「そうですね。頑張りましょう。」



クロワは何の疑いも持たず、今日もまたいつものように採掘作業に取りかかった。
どこをどれだけ掘ろうと、クロワの期待するものが出て来るはずがないとわかっているのに、そのことを言い出せない私は、日一日と重くなる心の負担に耐えかねていた。

私はまたクロワから見えない場所に姿を隠し、空を眺めながらこれからどうしたものかと考えを巡らせていた。
クロワは一生懸命に働いているというのに、私はまるで動く気にはなれなかった。

しばらくして、土砂の崩れる音と共にクロワの叫び声がその場に響き渡った。
私は飛び起き、声のする方へ駆け付けた。
そこには、土砂にまみれたクロワが倒れていたのだ。



「クロワさん!大丈夫ですか!!」

「ええ…大丈夫です。」

その言葉とは裏腹に、クロワの足や腕からはかなりの血が流れていた。



「血が…!一体、どうされたんです?」

「ええ…少し上の方を掘ってみようと思い立って上ったのは良いんですが、滑り落ちてしまって…」

「クロワさん!足の傷が深いようですよ!
大変だ!なにかがささったんですね!」

ほとんどは滑り落ちた時の擦り傷だったが、右足のふくらはぎの傷は相当深く血がどくどくと流れ出ていた。



「…多分、スコップがささったんですね。
大丈夫です。
たいしたことはありません。」

見ると、クロワの言う通り、スコップの縁に血がこびりついていた。
滑り落ちた時に運悪く、スコップの縁の上に落ちてしまったのだろう。

クロワは冷静にタオルで足を縛り止血をしていた。



「クロワさん、早く、宿へ戻りましょう。
私がおぶって行きますからどうぞ!」

「大丈夫です。
こうしておけば、じきに血は止まりますから。」

「だめですよ。
ちゃんと手当てをしなくては…
ここには水場もありません。
薬ももって来ていないんでしょう?
ここでは手当ては出来ませんから、ともかく宿へ戻りましょう!」

「私は帰りません。
このくらい、なんでもありませんから。」

そう言うと、クロワは立ちあがりまた作業を再開しようとスコップを握った。
その足からは、まだ赤い血が流れ続けている。 
 
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