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075 : 嘘と約束 白いネコ
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「クロワさんはこの本のことを知ってるのか?」
「あぁ、君が読んでたことを知ってる。」
「そうか、じゃあ、その時になにか言ってたんだな?」
「……まぁ、そういうことだ。」
「チェッ、そんなことならマルタンじゃなくて俺に直接言えば良いのに…
クロワさんも陰険な所があるんだな。」
「そう言うな。
それが彼女の優しさなんだ。」
「……わかったよ。
クロワさんにはこの本のことは言わない。
でも、フランクさんはなんだってこんな本を…」
「暇つぶしに読んでただけだろう。
あんまり他人のことを探らない方が良いぞ。
さ、俺達も仕事に戻ろうじゃないか。」
「俺は、荷物を持って行って来るよ。」
リュックは、私が吐いた嘘のことで気分を壊したのか、大きな荷物を担いで診療所へ戻って行った。
クロワにはまた申し訳ない事をしてしまった。
一つの事実を隠すために、嘘を重ねていく自分に怒りを感じながらも、今の私にはそうするしかなかった…
*
やがてあたりが暗くなり、今日の仕事は終わった。
仕事とは言っても、私はほとんど何もせず空を眺めていただけだが、クロワはそうではない。
「あら?リュックはどうしたのかしら?」
「リュックなら、フランクさんに荷物を届けに先に帰りましたよ。」
「そうだったんですか。
じゃあ、私達も帰りましょうか。」
土にまみれ汗びっしょりになっているクロワを見るのが辛かった。
私のせいで、まるで意味のないことをさせていることに、心が痛む。
宿に帰ると、リュックが一人で酒を飲んでいた。
明らかに機嫌の悪い顔をしている。
「ただいま、リュック!」
リュックは黙ったままそっぽを向いて、返事をしなかった。
「リュ…」
「クロワさん、彼は少々酔ってるようです。
先に入浴して下さい。」
私はクロワにそっと耳打ちした。
「リュック、ユベールの具合はどうだった?」
「あぁ、元気だったぜ。
医者も奇蹟だって言って驚いてたぜ。」
「奇蹟……」
「それで思い出したんだけどな。
マルタン、陽炎の化石の話を覚えてるか?」
「あぁ、君が読んでたことを知ってる。」
「そうか、じゃあ、その時になにか言ってたんだな?」
「……まぁ、そういうことだ。」
「チェッ、そんなことならマルタンじゃなくて俺に直接言えば良いのに…
クロワさんも陰険な所があるんだな。」
「そう言うな。
それが彼女の優しさなんだ。」
「……わかったよ。
クロワさんにはこの本のことは言わない。
でも、フランクさんはなんだってこんな本を…」
「暇つぶしに読んでただけだろう。
あんまり他人のことを探らない方が良いぞ。
さ、俺達も仕事に戻ろうじゃないか。」
「俺は、荷物を持って行って来るよ。」
リュックは、私が吐いた嘘のことで気分を壊したのか、大きな荷物を担いで診療所へ戻って行った。
クロワにはまた申し訳ない事をしてしまった。
一つの事実を隠すために、嘘を重ねていく自分に怒りを感じながらも、今の私にはそうするしかなかった…
*
やがてあたりが暗くなり、今日の仕事は終わった。
仕事とは言っても、私はほとんど何もせず空を眺めていただけだが、クロワはそうではない。
「あら?リュックはどうしたのかしら?」
「リュックなら、フランクさんに荷物を届けに先に帰りましたよ。」
「そうだったんですか。
じゃあ、私達も帰りましょうか。」
土にまみれ汗びっしょりになっているクロワを見るのが辛かった。
私のせいで、まるで意味のないことをさせていることに、心が痛む。
宿に帰ると、リュックが一人で酒を飲んでいた。
明らかに機嫌の悪い顔をしている。
「ただいま、リュック!」
リュックは黙ったままそっぽを向いて、返事をしなかった。
「リュ…」
「クロワさん、彼は少々酔ってるようです。
先に入浴して下さい。」
私はクロワにそっと耳打ちした。
「リュック、ユベールの具合はどうだった?」
「あぁ、元気だったぜ。
医者も奇蹟だって言って驚いてたぜ。」
「奇蹟……」
「それで思い出したんだけどな。
マルタン、陽炎の化石の話を覚えてるか?」
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