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075 : 嘘と約束 白いネコ
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「あ、そういえば、俺は掘る道具がないな。どうしよう。」
「フランクさんのを借りておけば良いじゃないか。」
「そうだな。
あれ?フランクさんは荷物も置いたまんまなのか?」
「本当ね。帰りに持って帰ってあげましょうよ。」
私達は採掘場に着くと、思い思いの場所に向かった。
私はもしかしたら昨日の子猫がまだこのあたりにいるのではないかと思いあたりを見渡したが、どこにもあの子猫の姿はなかった。
(やはり、あれはただの猫ではなかったのか…?)
一生懸命に土を掘るクロワの姿を見ていると良心の呵責に苛まされる。
それがいやで私はクロワから見えない場所へ移り、寝転がって空をながめていた。
「……なんだ、こんな所にいたのか。
しかも、サボってる!」
不意に聞こえたリュックの声に、私は驚いて身を起こした。
「リュック、すまない…
その…ちょっと具合が悪くてな…」
「そうだったのか…
あんたには、肉体労働はむいてなさそうだもんな。
無理すんなよ。
……そんなことより、ちょっとこれを見てくれよ。」
「なんなんだ?」
「フランクさんの荷物をまとめてたんだけどな。
その中に、これが…」
リュックが大きな荷物の中から取り出したのは「摩訶不思議大全集」と書かれたあの本だった。
「これは…!!
リュック、君はこの本を持って来てたのか?」
「そうじゃないさ。
だから、これはフランクさんの荷物の中にあったんだって!」
「……リュック、おかしなことを言うようだが、このことはクロワさんには言わないでくれ。」
「なんでだ?」
リュックがそう思うのも無理はない。
だが、この本のことを知ったら、クロワがユベールのことを…フランクが探していたものが本当は宝石等ではないことに気付いてしまうかもしれないと思った。
「……クロワさんは…そう、クロワさんはこの手の胡散臭い話が大嫌いなんだ。
こういうものを信じる人が嫌いなんだ。
だから…」
「そうなのか?
でも、俺が何日も続けて見たあの夢の話も信じてくれたみたいだけどな。」
「あれは無理をしてたんだ。
君を傷付けないように。
とにかく、この本の話をしたらきっとクロワさんは気分を害する。
だから言わないでくれ。」
「フランクさんのを借りておけば良いじゃないか。」
「そうだな。
あれ?フランクさんは荷物も置いたまんまなのか?」
「本当ね。帰りに持って帰ってあげましょうよ。」
私達は採掘場に着くと、思い思いの場所に向かった。
私はもしかしたら昨日の子猫がまだこのあたりにいるのではないかと思いあたりを見渡したが、どこにもあの子猫の姿はなかった。
(やはり、あれはただの猫ではなかったのか…?)
一生懸命に土を掘るクロワの姿を見ていると良心の呵責に苛まされる。
それがいやで私はクロワから見えない場所へ移り、寝転がって空をながめていた。
「……なんだ、こんな所にいたのか。
しかも、サボってる!」
不意に聞こえたリュックの声に、私は驚いて身を起こした。
「リュック、すまない…
その…ちょっと具合が悪くてな…」
「そうだったのか…
あんたには、肉体労働はむいてなさそうだもんな。
無理すんなよ。
……そんなことより、ちょっとこれを見てくれよ。」
「なんなんだ?」
「フランクさんの荷物をまとめてたんだけどな。
その中に、これが…」
リュックが大きな荷物の中から取り出したのは「摩訶不思議大全集」と書かれたあの本だった。
「これは…!!
リュック、君はこの本を持って来てたのか?」
「そうじゃないさ。
だから、これはフランクさんの荷物の中にあったんだって!」
「……リュック、おかしなことを言うようだが、このことはクロワさんには言わないでくれ。」
「なんでだ?」
リュックがそう思うのも無理はない。
だが、この本のことを知ったら、クロワがユベールのことを…フランクが探していたものが本当は宝石等ではないことに気付いてしまうかもしれないと思った。
「……クロワさんは…そう、クロワさんはこの手の胡散臭い話が大嫌いなんだ。
こういうものを信じる人が嫌いなんだ。
だから…」
「そうなのか?
でも、俺が何日も続けて見たあの夢の話も信じてくれたみたいだけどな。」
「あれは無理をしてたんだ。
君を傷付けないように。
とにかく、この本の話をしたらきっとクロワさんは気分を害する。
だから言わないでくれ。」
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