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075 : 嘘と約束 白いネコ
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ところが、今回はそうではなかった。
明らかに石ころとは違うものが残っていたのだ。
薄い霞のかかったような色をしたその石は、内部で空気が揺らめいているようなとても珍しいものだった。
(これは…まさか……!)
石を持つ手が震えた…
もしかしたら、これが陽炎の化石ではないのか!?
ふと、目を上げると今の今まで岩の上に寝そべっていた子猫がいない…
背筋に冷たいものが走った。
そうだ…!
これは、きっと陽炎の化石なのだ…!
あの白い子猫は、もしかすると、神の化身のようなものなのではなかったのか…?!
「クロ…」
私は、駆けだし、クロワの名を呼ぼうとし…
そして、急にその動きを止めた。
先ほどの場所へ戻り、その場に座りこむ。
これは、きっと、クロワに手渡すべきものなのだ。
しかし、私の脳裏に浮かんでいたのは、ベッドに横たわるユベールの姿だった。
ユベールは、生まれつき身体が弱いのだと聞いている。
不治の病などとは聞いていない。
だから、ユベールにこの石は必要ではない。
必要としているのはクロワだ…
不治の病に冒されているジャクリーヌなのだ。
これは、クロワに手渡さなければならない…
私は立ち上がった。
そして走り出した。
*
「マルタンさん…どうかされましたか?」
「フランクさん…これを…」
私は、陽炎の化石を彼の手の中にねじこんだ。
「マ、マルタンさん、こ、こ、これは…!!」
「フランクさん…
どうか…私の気が変わらないうちに、これを早くユベールに…」
「マルタンさん…それでは、あなたは私の探していたものを知ってらっしゃったんですか…
で、でも、あなたもこれを探されていたということは、もしやあなたにも…」
「フランクさん、頼む!
早く行ってくれ!
一刻も早くその石を持って行って下さい!
それから、このことは絶対にクロワさんやリュックには言わないで欲しいんです!」
「………わかりました。
ありがとう、マルタンさん…
このご恩は一生忘れません…」
彼は、涙を流し私の身体を抱き締めると、そのまま駆け出して行った。
明らかに石ころとは違うものが残っていたのだ。
薄い霞のかかったような色をしたその石は、内部で空気が揺らめいているようなとても珍しいものだった。
(これは…まさか……!)
石を持つ手が震えた…
もしかしたら、これが陽炎の化石ではないのか!?
ふと、目を上げると今の今まで岩の上に寝そべっていた子猫がいない…
背筋に冷たいものが走った。
そうだ…!
これは、きっと陽炎の化石なのだ…!
あの白い子猫は、もしかすると、神の化身のようなものなのではなかったのか…?!
「クロ…」
私は、駆けだし、クロワの名を呼ぼうとし…
そして、急にその動きを止めた。
先ほどの場所へ戻り、その場に座りこむ。
これは、きっと、クロワに手渡すべきものなのだ。
しかし、私の脳裏に浮かんでいたのは、ベッドに横たわるユベールの姿だった。
ユベールは、生まれつき身体が弱いのだと聞いている。
不治の病などとは聞いていない。
だから、ユベールにこの石は必要ではない。
必要としているのはクロワだ…
不治の病に冒されているジャクリーヌなのだ。
これは、クロワに手渡さなければならない…
私は立ち上がった。
そして走り出した。
*
「マルタンさん…どうかされましたか?」
「フランクさん…これを…」
私は、陽炎の化石を彼の手の中にねじこんだ。
「マ、マルタンさん、こ、こ、これは…!!」
「フランクさん…
どうか…私の気が変わらないうちに、これを早くユベールに…」
「マルタンさん…それでは、あなたは私の探していたものを知ってらっしゃったんですか…
で、でも、あなたもこれを探されていたということは、もしやあなたにも…」
「フランクさん、頼む!
早く行ってくれ!
一刻も早くその石を持って行って下さい!
それから、このことは絶対にクロワさんやリュックには言わないで欲しいんです!」
「………わかりました。
ありがとう、マルタンさん…
このご恩は一生忘れません…」
彼は、涙を流し私の身体を抱き締めると、そのまま駆け出して行った。
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