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074 : 森の小経(こみち)
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「あ、それから、天使像の話はここだけの話にしておいて下さいね。
あそこへ願掛けに行く人が増えたら、困りますから…
彼はおしゃべりだから困ってるんですよ。
本当にあの天使像はすごい力を持ってますから、こういう話はあんまり広めたくないのに…」
私は声を潜めてそう言いながら、わざとリュックを睨んでみせた。
*
「しかし、あんたの口のうまさにはまいるぜ。
あんたは昔、詐欺師かなにかしてたんじゃないか?」
「ひどいことを言うな。
これも、あの天使像とおばあさんのためじゃないか。」
「そりゃあそうだけど…
そういやあ、なんで、あいつに天使像の話はよそで話すななんて言ったんだ?
噂が広まらなきゃ、意味がないじゃないか。」
「リュック、人間っていう奴はな。
『言うな』と言われた方が言いたくなるもんなんだ。
彼はきっと私達が想像する以上にふれ回ってくれるさ。」
「そんなことまで見越して言ったのか!
あんたって奴は、たいした悪党だな!」
願いというものは不思議なもので、叶うと信じる気持ちが強い程、本当に叶ってしまう事が多い。
さっきの若者も、今は期待で胸がいっぱいだろうから、その気持ちのままにうまく叶ってくれれば良いのだが…
そうすれば、私達が噂話を流して歩かなくても、きっと自然に天使像を訪ねる人は増えるだろう。
それにつれて、あの老婆にも精神面、物質面その両方で潤いが出てくれればありがたい…
オデット親子の部屋はしんと静まり却っていた。
私達は物音を立てないように気を付けて隣の部屋に入り、すぐに横になった。
*
次の朝、私達はまたいつものように次の町を目指して旅立った。
「リュックさん…
僕、昨日、天使様の夢を見たんだ…」
めったに話すことのないユベールが、かすれた声でリュックに話しかけていた。
「そうか、それはきっと天使様が、お前の病気を治しに来てくれてたんだな!」
「そうかな…
僕…天使様に連れて行かれるのかと思ったけど、今日もちゃんと目が覚めた…」
「なに言ってんだ!
この前も言っただろ!
俺の知り合いのお姉ちゃんが、おまえの病気を治す薬を作ってくれるって!
もうちょっとできっと追いつくから、頑張らなきゃだめだぞ!」
「……うん。」
オデットは、二人の会話を聞きながらずっと俯いていた。
あそこへ願掛けに行く人が増えたら、困りますから…
彼はおしゃべりだから困ってるんですよ。
本当にあの天使像はすごい力を持ってますから、こういう話はあんまり広めたくないのに…」
私は声を潜めてそう言いながら、わざとリュックを睨んでみせた。
*
「しかし、あんたの口のうまさにはまいるぜ。
あんたは昔、詐欺師かなにかしてたんじゃないか?」
「ひどいことを言うな。
これも、あの天使像とおばあさんのためじゃないか。」
「そりゃあそうだけど…
そういやあ、なんで、あいつに天使像の話はよそで話すななんて言ったんだ?
噂が広まらなきゃ、意味がないじゃないか。」
「リュック、人間っていう奴はな。
『言うな』と言われた方が言いたくなるもんなんだ。
彼はきっと私達が想像する以上にふれ回ってくれるさ。」
「そんなことまで見越して言ったのか!
あんたって奴は、たいした悪党だな!」
願いというものは不思議なもので、叶うと信じる気持ちが強い程、本当に叶ってしまう事が多い。
さっきの若者も、今は期待で胸がいっぱいだろうから、その気持ちのままにうまく叶ってくれれば良いのだが…
そうすれば、私達が噂話を流して歩かなくても、きっと自然に天使像を訪ねる人は増えるだろう。
それにつれて、あの老婆にも精神面、物質面その両方で潤いが出てくれればありがたい…
オデット親子の部屋はしんと静まり却っていた。
私達は物音を立てないように気を付けて隣の部屋に入り、すぐに横になった。
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次の朝、私達はまたいつものように次の町を目指して旅立った。
「リュックさん…
僕、昨日、天使様の夢を見たんだ…」
めったに話すことのないユベールが、かすれた声でリュックに話しかけていた。
「そうか、それはきっと天使様が、お前の病気を治しに来てくれてたんだな!」
「そうかな…
僕…天使様に連れて行かれるのかと思ったけど、今日もちゃんと目が覚めた…」
「なに言ってんだ!
この前も言っただろ!
俺の知り合いのお姉ちゃんが、おまえの病気を治す薬を作ってくれるって!
もうちょっとできっと追いつくから、頑張らなきゃだめだぞ!」
「……うん。」
オデットは、二人の会話を聞きながらずっと俯いていた。
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