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ルカ(聖夜月ルカ)

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073 : 雨乞い

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(そういえば、雨乞いの儀式があるとか言っていたな…)



ふらふらと歩いているうちに、そんなことを思い出した。
特別、興味があって探したわけではなかったが、なんせ小さな町だ。
すぐにその儀式が行われる場所に出てしまった。
ふと見ると、そこに集まる人の中にリュックの姿があるではないか。



「…あぁ…それなら昔きいたことがあるぞ。顔のない天使のことだろ?」

「でも、あれは呪いの像だとか、堕天使だから近付くと祟りがあるとか聞いたぞ!」

「それは、誰かの陰謀だな!」

「陰謀…?」

「そうさ、あの天使像のご利益がすごいから、他の者に教えたくなくてわざと悪い話を教えるんだ。」

「まさか!」

「本当だぞ!
俺は、あの天使像を見に行って、大金持ちになった人や幸せになった人を何人も知ってるぜ!
あんたらも、一度行って天使様に雨乞いを頼んでみろよ。
きっとすぐに雨が降ってくるぜ!」

「しかし、それは道もないような山のてっぺんのほったて小屋に置いてあるんだろう?
そんな薄汚い所にいる天使に、そんな力があるとは思えないな。」

「そもそもそれが間違いだ!
俺が行った時は綺麗な祠だったぞ!
やっぱり、あんたらはご利益を一人占めしようとしてる誰かに騙されてるんだ。」



どうやらリュックは、あの天使像のことで良い噂を流しているようだ。



「あんたは最近行ったのか?
それで、なにか良いことはあったのか?」

「そ…それはだな…」

「なんだ、やっぱりないんじゃないか…」

「リュック!話してやれば良いんじゃないのか?」

「マルタン!」

そこらにいた男達の視線が、私に集まった。



「皆さん、あの天使像のご利益は本物ですよ。
なんせ、彼にはとびっきり美人の彼女が出来たんですから。」

「えっ?!こいつにとびっきりの美人…?」

「どういうことだ!!」

「そりゃあもう驚く程の絶世の美女ですよ。
それも、彼の方からではなく彼女から好きだと言われた程ですから。」

「えーーーーーーっっ!!」

「マルタン、もういいよ。」

赤くなって照れるリュックの態度が、さらにその話の信憑性を高めた。



「こいつにそんな美人の恋人が…」

そう言ったのは、リュックと同じ位の年齢の若者だった。
きっとこの男は恋人がいないのだろう。
リュックのその話にずいぶんと心を動かされたようだ。

 
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