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ルカ(聖夜月ルカ)

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071 : 顔のない天使

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「わしはあそこで生まれて、今までずーーっとあそこで暮らして来た。
父親や母親が死んだ後は、わしと兄で天使様を守って来た。
しかし、その兄ももう死んでしもうた。
わしが死んでしもうたら、天使様はどうなるのか…
それだけが気がかりなんじゃ…」

そう言って祠をみつめる老婆の横顔は、ひどく寂しそうに見えた。



「婆さん…」

「……もうええか?
気が済んだら、早く山を降りるがええ。
早く降りんと暗くなるぞ。」

「婆さん、食料なんかはどうしてるんだ?」

「ここらには山菜もあるし畑も作っとる。
川もあるから、小魚も取れるし、わし一人が食べて行くのに何の心配もありゃあせん。」

「そうか…
じゃあ、婆さん、いろいろありがとうな。」

私達は、山を降りた。
リュックは山を降りる間も、いつもとは違ってあまり話もせず、黙々と山を下るその姿は何かを一心に考えているようにも見えた。


小さな町だけに宿屋があるかどうか心配だったが、幸いにも宿屋は一軒だけあった。
きっと、クロワはここにいるはずだと見当を付けて入ってみると、やはり思った通り、クロワはそこにいた。



「クロワさん、大丈夫でしたか?」

「ええ…心配かけてすみませんでした。
少しびっくりしただけなんです。
それで、海底神殿の話はなにか聞けたんですか?」

「いや、それが、あの婆さんはそういう話はなにも知らないようだった。」

「そう…それは残念だったわね。
でも、またどこかで情報はみつかるわよ。
この先にもまだたくさんの町があるんですもの。
明日、また隣町で聞いてみれば良いじゃない。」

「クロワさん…それなんだけど…
俺、この町に少しいたいんだ。」

「え…?!何があるの?」

クロワが驚いたのと同じく、私もリュックが何を考えてるのかわからなかった。



「あの天使像の祠と、婆さんの家を少し修繕してやりたいんだ。」

「なぜ?
あのお婆さんは、海底神殿のことも知らなかったんでしょう?
そこまですることないじゃない。」

「あの祠は、あんなにボロくて汚いから、よけいに怖がられるんだと思うんだ。
あれじゃあ、まるでオバケ屋敷だからな。
もっと綺麗な祠に立て替えてやれば、そしたら、変な噂も立てられないんじゃないかと思ってな。」

「そんなことする必要ないわ。
あれは、きっと良くないものよ。
関わったら、きっと良くない事が起きる…
だから、あんなものは放っておきなさい。」

「いやだ…
俺は…もう決めたんだ。」 
 
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