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069 : 至福の喜び
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「あ、マルタンはちょっと俺の仕事を手伝ってくれ。」
「わかりました。」
私と、馬車の男はドニスについて屋敷の裏手へ回った。
「ピーター、こっちは農場で働いてもらってるマルタンだ。
リュックの兄貴分みたいなもんだな。」
「そうかい、よろしくな。
俺はピーターってもんだ。」
私達は、挨拶を交わし木陰に腰を降ろした。
「ドニスさん、ここで何を?」
「何って…作戦会議だ。」
「作戦会議…?」
ドニスが何のことを言っているのか、私にはわからなかった。
「それで…昨夜はどうだったんだ?」
「残念ながら、何もなかった…」
「何も…?」
「おまえ、ちゃんと見張ってたんだろうな?」
「当たり前だ!
一睡もせずに見てたが、何もなかった。
奴は、部屋の入ったっきり、朝になるまで出ちゃ来なかった。」
「……なんてこった。」
「しかも、夜明け頃起きて来たかと思ったら、仕事があるから帰るって言い出す始末だ。
あんなくそ真面目な奴は珍しいぜ!」
どうやらドニスは意図的に二人をピーターの家に泊まらせ、そこでリュックがどうするかをピーターに見張らせていたようだ。
良い年をした大人の考えとは思えない。
しかし、二人は至って真剣な顔をして話し合っている。
「マルタン、聞いた通りだ。
昨夜の作戦はうまくいかなかったようだ。
あいつがそこまで真面目な奴だとは思わなかった。
このままじゃだめだな。
なんとかしてやらないと、いつまで経っても二人はあのままだ。」
「いくらなんでも急ぎ過ぎじゃないですか?
もう少し時間をかけて…」
「だめだ、だめだ!
あんなくそ真面目な奴は、まわりですっかりお膳立てをしてやらないと。
ドニス、この際、直接言ってみたらどうだ?
ナディアを嫁にもらってくれって。」
「そうだな…やっぱりそうするしかないか…」
なんともストレートな考えをする二人に、私は呆れてはいたが、確かに彼らの言う事ももっともだ。
きっとリュックにまかせていたら、二人の恋が進展するのには時間がかかるだろう。
本当はじっくりと進めた方が良いのかもしれないが、私には陽炎の化石を探しに行かねばならないという事情もある。
ここは、ドニス達の言う通りにした方が、私やクロワにとっても好都合かもしれない。
「わかりました。」
私と、馬車の男はドニスについて屋敷の裏手へ回った。
「ピーター、こっちは農場で働いてもらってるマルタンだ。
リュックの兄貴分みたいなもんだな。」
「そうかい、よろしくな。
俺はピーターってもんだ。」
私達は、挨拶を交わし木陰に腰を降ろした。
「ドニスさん、ここで何を?」
「何って…作戦会議だ。」
「作戦会議…?」
ドニスが何のことを言っているのか、私にはわからなかった。
「それで…昨夜はどうだったんだ?」
「残念ながら、何もなかった…」
「何も…?」
「おまえ、ちゃんと見張ってたんだろうな?」
「当たり前だ!
一睡もせずに見てたが、何もなかった。
奴は、部屋の入ったっきり、朝になるまで出ちゃ来なかった。」
「……なんてこった。」
「しかも、夜明け頃起きて来たかと思ったら、仕事があるから帰るって言い出す始末だ。
あんなくそ真面目な奴は珍しいぜ!」
どうやらドニスは意図的に二人をピーターの家に泊まらせ、そこでリュックがどうするかをピーターに見張らせていたようだ。
良い年をした大人の考えとは思えない。
しかし、二人は至って真剣な顔をして話し合っている。
「マルタン、聞いた通りだ。
昨夜の作戦はうまくいかなかったようだ。
あいつがそこまで真面目な奴だとは思わなかった。
このままじゃだめだな。
なんとかしてやらないと、いつまで経っても二人はあのままだ。」
「いくらなんでも急ぎ過ぎじゃないですか?
もう少し時間をかけて…」
「だめだ、だめだ!
あんなくそ真面目な奴は、まわりですっかりお膳立てをしてやらないと。
ドニス、この際、直接言ってみたらどうだ?
ナディアを嫁にもらってくれって。」
「そうだな…やっぱりそうするしかないか…」
なんともストレートな考えをする二人に、私は呆れてはいたが、確かに彼らの言う事ももっともだ。
きっとリュックにまかせていたら、二人の恋が進展するのには時間がかかるだろう。
本当はじっくりと進めた方が良いのかもしれないが、私には陽炎の化石を探しに行かねばならないという事情もある。
ここは、ドニス達の言う通りにした方が、私やクロワにとっても好都合かもしれない。
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