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ルカ(聖夜月ルカ)

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069 : 至福の喜び

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「じゃ、そろそろ行こうか、隣町はずいぶんと遠いんだろ?」

「ええ…」

二人は、隣町への道を急いだ。
ここまでの道程とは違い、お互いがいろいろなことを話しながら…
ようやく隣町に着いたのは、太陽がだいぶ傾いた頃だった。



「こいつはまずいな。
早く届けて帰らないと、夜中になっちまう。」

「やはり、歩くと遠いもんですね。
いつもは馬車で来てたから、こんなにかかるとは思ってませんでした。」

「とにかく急がないとな。届けるのはどこだい?」

「こっちです。」

ナディアに連れて行かれた先は、町外れの一軒の家だった。



「ピーターさんの家はここです。」

扉を叩くと、中からドニスと同じくらいの年恰好の男が顔を出した。



「ピーターさん、こんばんわ!
父からの果物をお届けに参りました。」

「おぉっ!ナディアじゃないか!
久しぶりだな!さ、入んな!」

「いえ…私達はこれで…
あの…こちらは、うちの農場で働いてもらってるリュックさんです。」

「そうか、そうか。
とにかく、入んなって!」

ピーターの強引な誘いに逆らいきれず、二人は家の中へ引きこまれた。



「腹が減ってるだろう?
今、すぐに用意するからな。」

「ピーターさん、申し訳ないんだが、俺達、早く帰らないと…」

「何を言ってるんだ。
今から出たら、帰りは夜中になっちまう。
真っ暗な道で、おかしな奴に出くわしでもしたらどうするつもりだ。
おまえ一人で、ナディアを守りきれるのか?
今夜はここに泊まっていけ。」

「と、泊まってって…」

「ナディア、ちょっと手伝っておくれ。」

「は、はい。」



結局、ナディアの安全のことを考え、二人は、その晩、ピーターの家に泊めてもらうことになった。



「あんたはこの部屋、ナディアはその隣の部屋を使ってくれ。
じゃあ、おやすみ…」


 
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