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ルカ(聖夜月ルカ)

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068 : 下町の華

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それからの二日間も、やはり私はリュックと共に公演を見に出掛けた。
似た内容とはいえ、毎日見ても飽きないように少しずつ出し物が変えてある。
これも、観客への心遣いだろう。
おかげで三日とも、私達は心の底からショーを楽しむことが出来た。

クロワは相変わらず、一人で薬を売りに出掛けた。
本当ならすぐにでも出発したい気持ちなのだろうが、公演を楽しみにしているリュックのために待っていてくれたのだと思う。



「あぁ~、あっという間の三日間だったな。
もっと見たい!
いや、毎日でも見たい!」

「リュックは一座のことがよほど気に入ったのね。」

「クロワさんもちょっとくらい見に来れば良かったのに…
あんなすばらしいショーはめったに見られるもんじゃないぜ。
あ、そういえば、今夜はガスパールと食事をするんだな。」

「あぁ、それならもうお断りしたわ。
ガスパールさんもお疲れだろうと思って…」

「えっ!……クロワさん…本当にそれで良いのか?」

「ええ、その代わり、お花とお酒を差しいれしといたから。」

「いや…そういう意味じゃなくて…」

「どういう意味なの?」

「い…いや…クロワさんがそれで良いなら良いんだ。
ま、ガスパールだけが男じゃないしな!
うん、そうだ、やめて正解だ!」

怪訝な顔をするクロワの肩を叩きながら、リュックは何度も頷いていた。



次の朝、早速私達は町を出た。
陽炎の化石があるとされる町へは一本道だがかなり遠い。
これから、いくつもの町を通り過ぎていかなくてはならないだろう。



「聞いた話じゃ、ここから先はあんまり大きな町はなさそうだぜ。
途中で道を変えてみるか?」

「あら、リュックは大きな町に行きたいの?」

「そりゃあ、そうだろ。
金を稼ぐにしても、海底都市のことを調べるにしても大きな町の方が良さそうじゃないか?
それに、大きな町の方が何か面白いこともありそうだもんな。」

「そうとも限らないぞ。
意外と小さな町で、面白い情報を耳にすることも多いもんだぞ。」

「でも、どう考えても大きな町の方が人が多い。
人が多い方が、情報も多いとは思わないか?」

「それはそうかもしれないけど…情報が多いということは、逆に考えればいらない情報も多いということよ。」

「なるほどな…クロワさんは面白い考え方をするんだな。」 
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