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066 : お家芸
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クロワが部屋を離れた時、リュックが私に小声で囁きかけた。
「なぁ、マルタン、あんたはどう思う?」
「どうって…何のことだ?」
「クロワさんのことに決まってるだろ!
いくら部屋を譲ってもらったとはいえ、あのクロワさんが初対面の若い男をあんなに熱心に誘うなんておかしいと思わないか?
あれは、普通じゃないぞ。
きっと、クロワさんはガスパールに一目惚れしたんだ!」
事情を知らないリュックにはそう見えても不思議ではない。
「それはどうかはわからないが…
それならそれで良いじゃないか…」
「だって、ガスパールには好きな女がいるみたいじゃないか。
えっと…うん、そうだ!
確か、ジーナって言ってたな。
恋人のいる男を好きになんてなってもうまくいく道理はないぜ。
クロワさんが可哀想じゃないか。」
「そうとも限らないぞ。
ガスパールが、ジーナという人よりもクロワさんのことを好きになるってことだってありうる…」
「あんた…よく、そんなことを言うな。
それじゃあ、今度はジーナが気の毒な事になるじゃないか!
そんなこたぁ、しちゃいけないんだ!
俺は、絶対にそんなことさせないぞ!」
「おいおい。
本当にそうになったわけじゃないぞ。
第一、まず、そんなことにはならないだろうから、安心しろ。」
「変なことを言い出したのは、あんただろ!」
真剣に怒るリュックを見ていると、なぜだか笑いがこみあげてきた。
スレていないというのか、なんといえば良いのか…
一本気で純情な彼がとても可愛く思えてしまう。
本当は、私よりもずっと年上の彼のことが…
次の朝、私が目を覚ますと部屋に二人の姿はなかった。
ふと見ると、テーブルの上にはリュックの書き置きがあり、そこには乱雑な字でこう書いてあった。
「広場で待ってる」
おそらく満員で入れなかったら困ると思い、朝早くから出かけたのだろう。
クロワのことについては何も書いてなかったが、きっと少し後からリュックの元へ行ったのだろうと思い、私も準備を整えると広場へ向かった。
興行の開演にはまだ一時間近くあったが、そこにはもう長蛇の列が出来ていた。
「マルタン!ここだ!」
声の方を見ると、列の一番前で手を振るリュックの姿があった。
「なぁ、マルタン、あんたはどう思う?」
「どうって…何のことだ?」
「クロワさんのことに決まってるだろ!
いくら部屋を譲ってもらったとはいえ、あのクロワさんが初対面の若い男をあんなに熱心に誘うなんておかしいと思わないか?
あれは、普通じゃないぞ。
きっと、クロワさんはガスパールに一目惚れしたんだ!」
事情を知らないリュックにはそう見えても不思議ではない。
「それはどうかはわからないが…
それならそれで良いじゃないか…」
「だって、ガスパールには好きな女がいるみたいじゃないか。
えっと…うん、そうだ!
確か、ジーナって言ってたな。
恋人のいる男を好きになんてなってもうまくいく道理はないぜ。
クロワさんが可哀想じゃないか。」
「そうとも限らないぞ。
ガスパールが、ジーナという人よりもクロワさんのことを好きになるってことだってありうる…」
「あんた…よく、そんなことを言うな。
それじゃあ、今度はジーナが気の毒な事になるじゃないか!
そんなこたぁ、しちゃいけないんだ!
俺は、絶対にそんなことさせないぞ!」
「おいおい。
本当にそうになったわけじゃないぞ。
第一、まず、そんなことにはならないだろうから、安心しろ。」
「変なことを言い出したのは、あんただろ!」
真剣に怒るリュックを見ていると、なぜだか笑いがこみあげてきた。
スレていないというのか、なんといえば良いのか…
一本気で純情な彼がとても可愛く思えてしまう。
本当は、私よりもずっと年上の彼のことが…
次の朝、私が目を覚ますと部屋に二人の姿はなかった。
ふと見ると、テーブルの上にはリュックの書き置きがあり、そこには乱雑な字でこう書いてあった。
「広場で待ってる」
おそらく満員で入れなかったら困ると思い、朝早くから出かけたのだろう。
クロワのことについては何も書いてなかったが、きっと少し後からリュックの元へ行ったのだろうと思い、私も準備を整えると広場へ向かった。
興行の開演にはまだ一時間近くあったが、そこにはもう長蛇の列が出来ていた。
「マルタン!ここだ!」
声の方を見ると、列の一番前で手を振るリュックの姿があった。
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