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ルカ(聖夜月ルカ)

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066 : お家芸

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私達は、次の日、図書館を離れ、一座が興行を行う町を目指した。



「アデリーヌ、すごく寂しそうだったな…
俺のせいで急に発つ事になって悪かったな。」

「良いんだ。
あんまり長居をしていると、却って別れが辛くなるからな。
アデリーヌには、旅先から手紙を出すさ。」

「そういえば、ジャクリーヌにも手紙を出さなきゃならないんじゃないか?
マルタンはモテるから、うらやましいな。
なぁ、クロワさん、やっぱり俺よりマルタンの方が魅力があるか?」

「好みは人それぞれだから、きっとリュックのことを魅力的だと思う人もどこかにいるわよ。」

「なんだよ、それじゃあ、やっぱり俺の方が負けてるって言ってるようなもんじゃないか。」

「リュックは若いんだから、焦らなくてもこれからいくらだって出会いはあるわよ!」

「……若い…ねぇ…」

複雑な表情を浮かべ、そのままリュックは口を閉ざした。



私達は隣町の教会に立ち寄り、世話になった神父に礼を述べ、明日、旅立つ事を告げた。



「それは寂しくなりますね。
あなた方にはこちらこそ、いろいろとお世話になりました。
それで、これからはどちらの方に?」

「とりあえずは鳴き砂の町の方向に行ってみるつもりなんだ。」

「そうなんですか。
では、どうぞお気を付けて…」



その晩は、教会に泊めてもらい、私達は明くる朝に旅立った。
鳴き砂の町から隣町はそれ程離れてはいないということだったので、私達は町で休む事もなくただ通り過ぎ、ひたすら先を急いだ。



「今度の町は宿屋はあるみたいだな。
早く、一休みしたいもんだな。」

「珍しいわね、あなたが休みたいだなんて…」

「そういえば、そうだな。」



リュックの時計は動き出したとティアナは言ったらしい…
それは、年を取るということと同時に、今までのように病気一つせず、疲れを知らなかった身対ではなくなったということなのだろうか?



「しかし、リュック、人気のある一座が来てるんじゃ、宿屋もいっぱいかもしれないぞ。」

「そうか!
そういうこともあるかもしれないな。
興行は確か明日からだから、今夜は大丈夫だと思うんだが、問題は明日からだな。」

話に聞いていた通り、隣町へはさほど遠くはなく夕方過ぎに着く事が出来た。
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