お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
418 / 641
064 : 治療不可能

しおりを挟む



 「な!俺達が着いて来て正解だっただろう?」

「ええ…まさか、こんなにたくさんあるとは思ってもみませんでした。」

荷車には高く積まれた本が小山のようになっていた。
そこに乗せきれなかった分は、それぞれの背中に背負えるだけ担いだ。



「でも、良かったじゃないか。
こんなに一気に本が増えたら、またこれらを楽しんでくれる人もいるわけだしな。」

「本当にその通りですね。
それに、今の図書館には私の趣味でけっこう堅い本ばかりが揃ってますが、いただいたものの中には若い人にも好まれそうな本がけっこうありましたし。」

「そういえば、息子が若い頃に買い集めた本がほとんどだって言ってたな。
だから、爺さんには必要ないってわけなのか。」

重い荷車を押しながら、私達は図書館を目指した。









「マルタンさん!」

図書館に着くと、無邪気な微笑を浮かべたアデリーヌが私の胸に飛び込んで来た。




「アデリーヌさん、おひさしぶりですね。」

「マルタンさん…もう良いんです。
『アデリーヌ』と呼んで下さい。」

少女は少し頬を赤らめながら、小さな声でそう呟いた。



「では、これからはそうしましょう。」

「ありがとうございます、マルタンさん。
でも、どうしてここへ?
私、マルタンさんがまだ隣町にいらっしゃることをクロワさんからお聞きして、父が帰って来たら教会へ伺おうと思っていたんですよ。」

「おいおい、アデリーヌ、俺のことは無視か?」

「あ…リュックさんもいらっしゃったんですね。」

「ちぇっ、ひでぇな。
アデリーヌにはやっぱりマルタンしか見えてないんだな。」

「そ、そんなことありません。」

「とにかく、早く本を中へ運ぼうじゃないか!」

ほんのしばらく会わないうちに、アデリーヌの雰囲気が変わっていることに私は少なからず驚いた。
何と言えば良いのだろう…以前の刺々しさが薄らいで来たというのか…
相変わらず、物言いは大人びてはいるが、どこか少女らしい優しい雰囲気に変わっていた。




本を運び入れた私達は、ジュスタンの指示によって、本の破れや落書き等がないか、一冊一冊を細かくチェックしていた。
ふと見ると、リュックは手を止め、壁にもたれながら一冊の本を読み耽っていた。 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

処理中です...