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064 : 治療不可能
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「な!俺達が着いて来て正解だっただろう?」
「ええ…まさか、こんなにたくさんあるとは思ってもみませんでした。」
荷車には高く積まれた本が小山のようになっていた。
そこに乗せきれなかった分は、それぞれの背中に背負えるだけ担いだ。
「でも、良かったじゃないか。
こんなに一気に本が増えたら、またこれらを楽しんでくれる人もいるわけだしな。」
「本当にその通りですね。
それに、今の図書館には私の趣味でけっこう堅い本ばかりが揃ってますが、いただいたものの中には若い人にも好まれそうな本がけっこうありましたし。」
「そういえば、息子が若い頃に買い集めた本がほとんどだって言ってたな。
だから、爺さんには必要ないってわけなのか。」
重い荷車を押しながら、私達は図書館を目指した。
*
「マルタンさん!」
図書館に着くと、無邪気な微笑を浮かべたアデリーヌが私の胸に飛び込んで来た。
「アデリーヌさん、おひさしぶりですね。」
「マルタンさん…もう良いんです。
『アデリーヌ』と呼んで下さい。」
少女は少し頬を赤らめながら、小さな声でそう呟いた。
「では、これからはそうしましょう。」
「ありがとうございます、マルタンさん。
でも、どうしてここへ?
私、マルタンさんがまだ隣町にいらっしゃることをクロワさんからお聞きして、父が帰って来たら教会へ伺おうと思っていたんですよ。」
「おいおい、アデリーヌ、俺のことは無視か?」
「あ…リュックさんもいらっしゃったんですね。」
「ちぇっ、ひでぇな。
アデリーヌにはやっぱりマルタンしか見えてないんだな。」
「そ、そんなことありません。」
「とにかく、早く本を中へ運ぼうじゃないか!」
ほんのしばらく会わないうちに、アデリーヌの雰囲気が変わっていることに私は少なからず驚いた。
何と言えば良いのだろう…以前の刺々しさが薄らいで来たというのか…
相変わらず、物言いは大人びてはいるが、どこか少女らしい優しい雰囲気に変わっていた。
本を運び入れた私達は、ジュスタンの指示によって、本の破れや落書き等がないか、一冊一冊を細かくチェックしていた。
ふと見ると、リュックは手を止め、壁にもたれながら一冊の本を読み耽っていた。
「な!俺達が着いて来て正解だっただろう?」
「ええ…まさか、こんなにたくさんあるとは思ってもみませんでした。」
荷車には高く積まれた本が小山のようになっていた。
そこに乗せきれなかった分は、それぞれの背中に背負えるだけ担いだ。
「でも、良かったじゃないか。
こんなに一気に本が増えたら、またこれらを楽しんでくれる人もいるわけだしな。」
「本当にその通りですね。
それに、今の図書館には私の趣味でけっこう堅い本ばかりが揃ってますが、いただいたものの中には若い人にも好まれそうな本がけっこうありましたし。」
「そういえば、息子が若い頃に買い集めた本がほとんどだって言ってたな。
だから、爺さんには必要ないってわけなのか。」
重い荷車を押しながら、私達は図書館を目指した。
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「マルタンさん!」
図書館に着くと、無邪気な微笑を浮かべたアデリーヌが私の胸に飛び込んで来た。
「アデリーヌさん、おひさしぶりですね。」
「マルタンさん…もう良いんです。
『アデリーヌ』と呼んで下さい。」
少女は少し頬を赤らめながら、小さな声でそう呟いた。
「では、これからはそうしましょう。」
「ありがとうございます、マルタンさん。
でも、どうしてここへ?
私、マルタンさんがまだ隣町にいらっしゃることをクロワさんからお聞きして、父が帰って来たら教会へ伺おうと思っていたんですよ。」
「おいおい、アデリーヌ、俺のことは無視か?」
「あ…リュックさんもいらっしゃったんですね。」
「ちぇっ、ひでぇな。
アデリーヌにはやっぱりマルタンしか見えてないんだな。」
「そ、そんなことありません。」
「とにかく、早く本を中へ運ぼうじゃないか!」
ほんのしばらく会わないうちに、アデリーヌの雰囲気が変わっていることに私は少なからず驚いた。
何と言えば良いのだろう…以前の刺々しさが薄らいで来たというのか…
相変わらず、物言いは大人びてはいるが、どこか少女らしい優しい雰囲気に変わっていた。
本を運び入れた私達は、ジュスタンの指示によって、本の破れや落書き等がないか、一冊一冊を細かくチェックしていた。
ふと見ると、リュックは手を止め、壁にもたれながら一冊の本を読み耽っていた。
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