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063 : 屋根裏の幸せ
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「ここを離れるのはお寂しいでしょう?」
「…そうですね。ここには長い間住んでましたからね…
でも、これからは三人一緒なんですから。
住む場所なんて、どこでも構いませんわ。」
そう言って微笑むパスカル夫人とは対照的に、ジャクリーヌはうつ向き、寂しそうな表情をしていた。
たいした荷物はないということだったが、まとめてみるとそれなりの量になった。
荷物の整理が片付くと、ノエルとジャクリーヌは、故郷に帰るという作り話を隣人達に吹聴してまわった。
「じゃ、そろそろでかけようか。
忘れものはないか?」
「…そうだ!ノエルさん、空き瓶はありませんか?」
「空き瓶ですか…
ちょっと待っていて下さいね。」
やがて、ノエルはジャムでも入っていたような空き瓶を持ってきた。
「こんなもので良いかしら?」
「ええ。十分です。」
私は、空き瓶の中に一掴みの鳴き砂を詰めた。
「ご主人にお土産です。」
「まぁ……マルタンさん、どうもありがとう。
きっと、主人も喜びますわ。」
「じゃ、そろそろでかけましょうか。」
その時、ジャクリーヌが小さなうめき声をあげて、その場にうずくまった。
「ジャクリーヌ、どうした?」
「お…おなかが…痛くて…」
ジャクリーヌの痛みは相当ひどいらしく、顔からは汗が噴き出していた。
リュックがすぐさまジャクリーヌを背負い、私達は診療所へ急いだ。
「大丈夫かな、ジャクリーヌ…」
「最近、相次いでいろいろあったから、疲れが出たのかもしれないな。」
「でも、ジャクリーヌはおなかが痛いって言ってたぜ。
何かにあたったとしたら、パスカルさん達も同じようになるはずだが、奥さんはなんともないようだし…心配だな。」
しばらくして、医者が部屋から出ていった。
「ジャクリーヌの具合はどうなんだい?」
「痛み止めを打ってもらったら、そのまま眠ってしまったようです。
念のため、明日、検査をするそうですから、今夜はここで入院させてもらうことになりました。
申し訳ありませんが、主人にそのことをお伝え願えますか?」
「わかりました。
では、私達は荷物を運んで、明日、また来ます。」
「すみません。
お手数をおかけしますがどうぞよろしくお願いします。」
「ここを離れるのはお寂しいでしょう?」
「…そうですね。ここには長い間住んでましたからね…
でも、これからは三人一緒なんですから。
住む場所なんて、どこでも構いませんわ。」
そう言って微笑むパスカル夫人とは対照的に、ジャクリーヌはうつ向き、寂しそうな表情をしていた。
たいした荷物はないということだったが、まとめてみるとそれなりの量になった。
荷物の整理が片付くと、ノエルとジャクリーヌは、故郷に帰るという作り話を隣人達に吹聴してまわった。
「じゃ、そろそろでかけようか。
忘れものはないか?」
「…そうだ!ノエルさん、空き瓶はありませんか?」
「空き瓶ですか…
ちょっと待っていて下さいね。」
やがて、ノエルはジャムでも入っていたような空き瓶を持ってきた。
「こんなもので良いかしら?」
「ええ。十分です。」
私は、空き瓶の中に一掴みの鳴き砂を詰めた。
「ご主人にお土産です。」
「まぁ……マルタンさん、どうもありがとう。
きっと、主人も喜びますわ。」
「じゃ、そろそろでかけましょうか。」
その時、ジャクリーヌが小さなうめき声をあげて、その場にうずくまった。
「ジャクリーヌ、どうした?」
「お…おなかが…痛くて…」
ジャクリーヌの痛みは相当ひどいらしく、顔からは汗が噴き出していた。
リュックがすぐさまジャクリーヌを背負い、私達は診療所へ急いだ。
「大丈夫かな、ジャクリーヌ…」
「最近、相次いでいろいろあったから、疲れが出たのかもしれないな。」
「でも、ジャクリーヌはおなかが痛いって言ってたぜ。
何かにあたったとしたら、パスカルさん達も同じようになるはずだが、奥さんはなんともないようだし…心配だな。」
しばらくして、医者が部屋から出ていった。
「ジャクリーヌの具合はどうなんだい?」
「痛み止めを打ってもらったら、そのまま眠ってしまったようです。
念のため、明日、検査をするそうですから、今夜はここで入院させてもらうことになりました。
申し訳ありませんが、主人にそのことをお伝え願えますか?」
「わかりました。
では、私達は荷物を運んで、明日、また来ます。」
「すみません。
お手数をおかけしますがどうぞよろしくお願いします。」
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