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063 : 屋根裏の幸せ
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「悪いが、そのことについては話せないんだ…
私の言うことが信じられないのも無理はない。
だから、すぐに信じなくても構わない。
いずれ、それが嘘かどうかはわかると思うから。」
「……なぁ、マルタン…俺達、親友だよな?
なら、なんで、すべてを教えてくれないんだ?
俺のことが信用出来ないのか?」
「そうじゃない…
でも、言えないんだ。
私は、それを教えてくれた人に約束したんだ。
その人のことは誰にも言わないってことを。」
「そうか…わかったよ。」
リュックはそう言うとくるっと私に背を向け、それからはすっかり黙りこんでしまった。
*
それ以来、リュックと私の関係はなんとなくぎくしゃくした雰囲気になってしまった。
話すのは必要最低限のことだけ。
リュックは私とは極力二人きりにならないようにしているように感じられた。
夜、寝る前に話しかけようとしても、疲れていると言ってはぐらかされてしまう。
アデリーヌとティアナのことを話してしまえばそれで解決するのかもしれないが、そうなると彼はきっと、もっと詳しい話を聞きにアデリーヌの元を訪れるだろう。
そこで、私がティアナのことを話したということがわかれば、今度はアデリーヌが傷付くことになる。
それを考えると、やはり、私には話すことは出来なかった。
さらに、悪いことには、ジャクリーヌが私に好意を抱いていることが顕著になってきた。
おそらく、私が花を贈ったことで、私もジャクリーヌに好意を持っていると誤解されたためだろう。
なにかというとジャクリーヌは私の傍にまとわりつくようになった。
そのことが、ますます、私とリュックの間の亀裂を深めて行く結果となってしまった。
そんな気まずい雰囲気の中、私達は家を引き払うノエルとジャクリーヌについて、あの鳴き砂の町を訪れていた。
私の言うことが信じられないのも無理はない。
だから、すぐに信じなくても構わない。
いずれ、それが嘘かどうかはわかると思うから。」
「……なぁ、マルタン…俺達、親友だよな?
なら、なんで、すべてを教えてくれないんだ?
俺のことが信用出来ないのか?」
「そうじゃない…
でも、言えないんだ。
私は、それを教えてくれた人に約束したんだ。
その人のことは誰にも言わないってことを。」
「そうか…わかったよ。」
リュックはそう言うとくるっと私に背を向け、それからはすっかり黙りこんでしまった。
*
それ以来、リュックと私の関係はなんとなくぎくしゃくした雰囲気になってしまった。
話すのは必要最低限のことだけ。
リュックは私とは極力二人きりにならないようにしているように感じられた。
夜、寝る前に話しかけようとしても、疲れていると言ってはぐらかされてしまう。
アデリーヌとティアナのことを話してしまえばそれで解決するのかもしれないが、そうなると彼はきっと、もっと詳しい話を聞きにアデリーヌの元を訪れるだろう。
そこで、私がティアナのことを話したということがわかれば、今度はアデリーヌが傷付くことになる。
それを考えると、やはり、私には話すことは出来なかった。
さらに、悪いことには、ジャクリーヌが私に好意を抱いていることが顕著になってきた。
おそらく、私が花を贈ったことで、私もジャクリーヌに好意を持っていると誤解されたためだろう。
なにかというとジャクリーヌは私の傍にまとわりつくようになった。
そのことが、ますます、私とリュックの間の亀裂を深めて行く結果となってしまった。
そんな気まずい雰囲気の中、私達は家を引き払うノエルとジャクリーヌについて、あの鳴き砂の町を訪れていた。
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