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ルカ(聖夜月ルカ)

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063 : 屋根裏の幸せ

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パスカル親子は教会の屋根裏で、誰にも知られる事なく穏やかな日々を過ごしていた。
近いうちに、ノエルとジャクリーヌはノエルの両親の面倒をみるため故郷に帰ると言ってあの家を離れることになっている。
そして、パスカルがもう少し元気になった頃、神父の知り合いのいる遠くの土地で暮らす手筈が整っていた。
パスカルを無実の罪に落とし入れた犯人達も、まさかそこまでは追って来ないだろう。
きっと、あのままパスカルが谷底で死んだと思いこむはずだ。
そうなれば、やっと彼らも安心して暮らせるようになる。

私達はというと、教会で屋根の修理をしているふりをしながら、屋根裏部屋の家具作りに励んでいた。




「リュックさんは本当に器用なんですね。
こんな腕を持ってらっしゃるなら、家具職人にでもなられれば良ろしいのに…」

「それ程の腕はないよ。」

「いやいや、たいしたもんですよ。」

「そうかい?」

パスカル夫妻に誉められて照れたリュックは、横目遣いでジャクリーヌを見た。



リュックがジャクリーヌに好意を抱いていることは、すぐにわかった。
しかし、当のジャクリーヌはまるでそのことに気付いた素振りはない。

ある時、材料を買いにでかけた際に、町角に花売りの娘が立っているのを見かけた。



「リュック、花売りの娘がいるぞ。」

「あぁ、そうだな。
それがどうかしたのか?」

「花を買って来たらどうだ?」

「花を?教会にはいつも誰かが持って来てるじゃないか。」

「そうじゃないさ。
ジャクリーヌにだ。」

「な…なんで、ジャクリーヌに花なんか…」

「女性は花をもらうと喜ぶもんだぞ。」

「そ、そんなこと、俺には関係ない!」



まるで、十代の少年のようなリュックのその態度に、私は思わず噴き出してしまった。
いくら女性に免疫がないとはいえ、ここまで彼が純情だとは考えていなかったのだ。
私は、彼の初恋になんとか協力してやりたい気分になっていた。



「仕方ないな。」

私は、照れてそっぽを向いているリュックを置いて、花売りの少女から可愛らしい花束を買った。
これを、リュックからだと言ってジャクリーヌに手渡そうと考えたのだ。

 
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