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062 : 恩赦
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パスカルは、皆の心配していた脱走をしたのではなかった。
つい最近、投獄されていた土地の領主の娘に結婚が決まり、さらにその兄夫婦に男の子が産まれた。
その恩赦を受けてパスカルは無罪放免となったということだった。
一生出られることはないと思いこんでいたパスカルは、喜び勇んで家族の待つ家への道を急いでいた。
そんな時、覆面をかぶった二人組みの男に襲われ、谷底に突き落とされたというのだ。
「落ちてからどのくらい経ったのかはわかりません。
私は、自分がまだ生きていることに驚きました。
でも、いつ死んでもおかしくない程のひどい怪我をしている。
せめて最後に妻と娘に会いたい…
私はその想いだけで必死だったのです。」
「そうか、それで力尽きた所へ、ちょうど俺達が通りがかったってことか…」
「それでは、あなた方が私を…?」
「そうよ!この方々はあなたの命の恩人なのよ!」
「そうでしたか…それは本当にどうもありがとうございました。」
「俺達はたまたまそこを通っただけだから。
それよりもあんたの娘さんが、あんたに血を分けてくれたから、あんたは助かったんだぜ!」
「娘が…?」
「あなた、気付いてないの?
この子がジャクリーヌよ…!」
「な、なんだって…!
この子があの小さかったジャクリーヌ…?
こんなに綺麗になって…
ジャクリーヌ…ごめんよ、長い間、辛い想いをさせてしまって…」
「何を言ってるんです。
辛い想いをされたのは父さんの方じゃないですか。
でも、本当に良かった…
父さん…会いたかった…!!」
ジャクリーヌはパスカルの傍に寄り添い、熱い涙を流し始めた。
私達は、パスカル親子の邪魔をしてはいけないと思いそっと部屋を後にした。
そのうち、パスカルの意識が戻ったことを聞きつけた医師がやって来た。
医師の話によれば、これならあとしばらくすれば退院出来るだろうとのことだった。
「良かったですね。
これからは、家族水入らずで暮らせますね。」
「……いえ、私はあそこへは帰れません。」
「どういうことなの?あなた…」
「……私と一緒にいたら、おまえたちに危害が及ぶかもしれない…」
「なんでなんだ?
あんたは恩赦を受けて放免されたんだろ?
それなのに、なぜ?」
「……私を襲った二人組みは私に言ったのです。
『おまえが生きていては面倒なことになる』…と。」
つい最近、投獄されていた土地の領主の娘に結婚が決まり、さらにその兄夫婦に男の子が産まれた。
その恩赦を受けてパスカルは無罪放免となったということだった。
一生出られることはないと思いこんでいたパスカルは、喜び勇んで家族の待つ家への道を急いでいた。
そんな時、覆面をかぶった二人組みの男に襲われ、谷底に突き落とされたというのだ。
「落ちてからどのくらい経ったのかはわかりません。
私は、自分がまだ生きていることに驚きました。
でも、いつ死んでもおかしくない程のひどい怪我をしている。
せめて最後に妻と娘に会いたい…
私はその想いだけで必死だったのです。」
「そうか、それで力尽きた所へ、ちょうど俺達が通りがかったってことか…」
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「そうでしたか…それは本当にどうもありがとうございました。」
「俺達はたまたまそこを通っただけだから。
それよりもあんたの娘さんが、あんたに血を分けてくれたから、あんたは助かったんだぜ!」
「娘が…?」
「あなた、気付いてないの?
この子がジャクリーヌよ…!」
「な、なんだって…!
この子があの小さかったジャクリーヌ…?
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「何を言ってるんです。
辛い想いをされたのは父さんの方じゃないですか。
でも、本当に良かった…
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ジャクリーヌはパスカルの傍に寄り添い、熱い涙を流し始めた。
私達は、パスカル親子の邪魔をしてはいけないと思いそっと部屋を後にした。
そのうち、パスカルの意識が戻ったことを聞きつけた医師がやって来た。
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「良かったですね。
これからは、家族水入らずで暮らせますね。」
「……いえ、私はあそこへは帰れません。」
「どういうことなの?あなた…」
「……私と一緒にいたら、おまえたちに危害が及ぶかもしれない…」
「なんでなんだ?
あんたは恩赦を受けて放免されたんだろ?
それなのに、なぜ?」
「……私を襲った二人組みは私に言ったのです。
『おまえが生きていては面倒なことになる』…と。」
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