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ルカ(聖夜月ルカ)

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059 : 吉報

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それから三日後、私達は、また新たな旅に出発した。



「残念です。
あなた方とはせっかく仲良くなれた所なのに…」

「私達も同じ気持ちですよ。
ですが、私達にはやらなくてはならないことがありまして…」

「そうですか…それでは仕方ありませんね。」

「また、そのうち遊びに来るよ。
その頃にはきっとあんたの本が出版されてるだろうな。」

「お待ちしてますよ。
どうか、お気を付けて…!」

「皆さん、本当にいろいろとありがとうございました。」

ジュスタン親子に手を振りながら、私達は図書館を後にした。
少し行き掛けた所で、アデリーヌが息を切らせて走りこんで来た。



「どうしたんです?アデリーヌさん…」

アデリーヌは何も言わず、私の袖をひっぱり、クロワ達から少し離れた所へ私をひっぱって行った。



「あの…マルタンさん…」

「なんですか?なにかあったんですか?」

「……言わない方が良いかとも思ったんですが…
やっぱり、お伝えします。
実は……ティアナが今朝早くに私に言ったの。
『マルタンは思い出してはいけない。』って…」

「思い出してはいけない…?
記憶のことですか?
それ以外にも、なにか…?」

アデリーヌは、黙って私から目を背けうつむいた。



「他にもあるんですね!
何と?
ティアナは何と言ったんです?」

「『記憶は死と引き換え』…これだけです。
ごめんなさい。
私にはどういう事だかわからないけど…でも、こんないやな言葉を伝えてしまってごめんなさい。」

「記憶は死と引き換え…
……ありがとう、アデリーヌさん。
ティアナの言葉を伝えて下さったこと、感謝します。」

「マルタンさん…どうか気を付けて下さい。
そして、また元気でうちに遊びに来て下さい!
お願いです!」

「ええ、もちろんですよ。
必ず、また、この町へ戻って来ます。
だから、安心して下さい。」

「ありがとう、マルタンさん。」

戻って行くアデリーヌの背中をみつめながら、私の頭の中では、今、言われた事が何度も繰り返されていた。



記憶は死と引き換え…



それがどういう意味なのかはわからない。
ただ、思い出してはいけないという事と組み合わせて考えれば…
私が、過去を思い出した時、誰かが死ぬということと考えるのが自然なのだろうか…
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