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058 : お母さんのぬいぐるみ
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「それだけじゃないわ。
私にはティアナの声が聞こえるのよ。
それでも、おかしいと思わないの?」
「アデリーヌさん…私は過去の記憶がないのです。
どこで、どんな両親の元に生まれ、どんな生活をしていたのか…
本当は、なんて言う名前なのかさえ、わからないのですよ。
その方が、よほどおかしなことだとは思われませんか?」
「……そうだったの…そんなこと全然知らなかったわ。
それで、何も思い出さないの?」
「ええ…なにも…」
「怖くない?」
「怖いですよ。
でも、それが現実ならば、それを受け入れるしかありませんからね。」
「……あなたは、見かけに寄らず強い人なのね…」
「強い?私が…?」
「ええ、そうよ。」
その時、私の名を呼ぶリュックの声が聞こえて来た。
「アデリーヌさん、お話し中ですが、私はもう行かなくてはなりません。」
「……マルタンさん…ティアナが言ってたの。
リュックさんの時計が動き出したって…」
「え…っ?!」
「リュックさんの時計はこれからもごく普通に時を刻むって。
だから、安心して…」
「そ、それは…」
「早く行って。
それと、今の話は誰にも言わないで。」
私が部屋を出たのと同時に、リュックが納戸から現れた。
「マルタン、どこ、行ってたんだよ!
釘がなきゃあ仕事が進まないじゃないか。」
「す、すまない…ちょっとな…」
アデリーヌの言った言葉が、頭の中を何度もかけめぐる。
リュックの時計が動き出したとは、どういうことだ?
時計はごく普通に時を刻む…
まさか…それは、緑の玉を飲まなくても彼の身体は今後も何事もないということなのか?
これからは、ごく普通の人間のように年をとっていくだけのことだと…
しかし、なぜ、アデリーヌがそんなことを知っている?
クロワさえもが知らないそのことを…
私にはティアナの声が聞こえるのよ。
それでも、おかしいと思わないの?」
「アデリーヌさん…私は過去の記憶がないのです。
どこで、どんな両親の元に生まれ、どんな生活をしていたのか…
本当は、なんて言う名前なのかさえ、わからないのですよ。
その方が、よほどおかしなことだとは思われませんか?」
「……そうだったの…そんなこと全然知らなかったわ。
それで、何も思い出さないの?」
「ええ…なにも…」
「怖くない?」
「怖いですよ。
でも、それが現実ならば、それを受け入れるしかありませんからね。」
「……あなたは、見かけに寄らず強い人なのね…」
「強い?私が…?」
「ええ、そうよ。」
その時、私の名を呼ぶリュックの声が聞こえて来た。
「アデリーヌさん、お話し中ですが、私はもう行かなくてはなりません。」
「……マルタンさん…ティアナが言ってたの。
リュックさんの時計が動き出したって…」
「え…っ?!」
「リュックさんの時計はこれからもごく普通に時を刻むって。
だから、安心して…」
「そ、それは…」
「早く行って。
それと、今の話は誰にも言わないで。」
私が部屋を出たのと同時に、リュックが納戸から現れた。
「マルタン、どこ、行ってたんだよ!
釘がなきゃあ仕事が進まないじゃないか。」
「す、すまない…ちょっとな…」
アデリーヌの言った言葉が、頭の中を何度もかけめぐる。
リュックの時計が動き出したとは、どういうことだ?
時計はごく普通に時を刻む…
まさか…それは、緑の玉を飲まなくても彼の身体は今後も何事もないということなのか?
これからは、ごく普通の人間のように年をとっていくだけのことだと…
しかし、なぜ、アデリーヌがそんなことを知っている?
クロワさえもが知らないそのことを…
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