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058 : お母さんのぬいぐるみ
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次の日から、早速、私達は本棚の製作に取りかかった。
いや、正確には私はただリュックに言われるままに、彼の手伝いをしていたに過ぎない。
材料をすべて運び入れると、彼は、慣れた手付きで壁や本のサイズを測り、板に印しを付けていく。
板をまっすぐに切ること位なら私にも出来そうだと思ったが、やってみると意外に難しいことだということを痛感した。
真っ直ぐに切っているつもりが、だんだん曲がってしまうのだ。
「良いよ、マルタン。
それは、俺がやるから、今は、本の分類の方を手伝ってやってくれ。」
役立たずの私は、そう言ってその場を追い払われてしまった。
すでに、作業を始めていたクロワやジュスタンに手順を教えてもらいながら、私は、本の分類や破損した本の補修を手伝った。
アデリーヌは、受付の仕事をしているようだった。
こんな小さな町だというのに、図書館には朝からそれなりの来訪者があった。
「このあたりには、図書館がほとんどありませんから、けっこう遠くの町から来られる方もいらっしゃるんですよ。」
そう言いながら、ジュスタンは嬉しそうに微笑んだ。
「アデリーヌは学校へは行ってないのですか?」
「……ええ。
小さい頃に母親を亡くしたせいでしょうか…
しっかりした子ではあるのですが、どこか心を閉ざした子供になってしまいましてね…
特に、同年代の子供とはまるで遊ぼうとはしないのです。
あの子は、小さい頃から、母親の部屋でよく一人で遊んでいました。
私が相手をしてやれなかったのも悪いのですが、なんせ、この図書館のことを一人できりもりしていましたから、時間がなくて…
部屋を図書館の奥に増設したのも実は、あの子のためだったんです。
そうすれば、遊んではやれなくてもいつも目の届く所にいられますから。」
「そうだったのですか…
仕方のないことですが、小さな子供にとっては寂しいことでしょうね。」
「ええ…
そのせいでしょうか…
あの子は少しおかしなことを言うんです。」
「おかしなこと?」
「あの子の母親が可愛がっていたクマのぬいぐるみがあるんですが、アデリーヌはまるであのクマを生きてるかのように扱うのです。
それどころか、『ティアナがこれから雨が降るって言った』なんてことを…あ、ティアナっていうのはクマの名前なんですが、そんなことを言うんです。」
いや、正確には私はただリュックに言われるままに、彼の手伝いをしていたに過ぎない。
材料をすべて運び入れると、彼は、慣れた手付きで壁や本のサイズを測り、板に印しを付けていく。
板をまっすぐに切ること位なら私にも出来そうだと思ったが、やってみると意外に難しいことだということを痛感した。
真っ直ぐに切っているつもりが、だんだん曲がってしまうのだ。
「良いよ、マルタン。
それは、俺がやるから、今は、本の分類の方を手伝ってやってくれ。」
役立たずの私は、そう言ってその場を追い払われてしまった。
すでに、作業を始めていたクロワやジュスタンに手順を教えてもらいながら、私は、本の分類や破損した本の補修を手伝った。
アデリーヌは、受付の仕事をしているようだった。
こんな小さな町だというのに、図書館には朝からそれなりの来訪者があった。
「このあたりには、図書館がほとんどありませんから、けっこう遠くの町から来られる方もいらっしゃるんですよ。」
そう言いながら、ジュスタンは嬉しそうに微笑んだ。
「アデリーヌは学校へは行ってないのですか?」
「……ええ。
小さい頃に母親を亡くしたせいでしょうか…
しっかりした子ではあるのですが、どこか心を閉ざした子供になってしまいましてね…
特に、同年代の子供とはまるで遊ぼうとはしないのです。
あの子は、小さい頃から、母親の部屋でよく一人で遊んでいました。
私が相手をしてやれなかったのも悪いのですが、なんせ、この図書館のことを一人できりもりしていましたから、時間がなくて…
部屋を図書館の奥に増設したのも実は、あの子のためだったんです。
そうすれば、遊んではやれなくてもいつも目の届く所にいられますから。」
「そうだったのですか…
仕方のないことですが、小さな子供にとっては寂しいことでしょうね。」
「ええ…
そのせいでしょうか…
あの子は少しおかしなことを言うんです。」
「おかしなこと?」
「あの子の母親が可愛がっていたクマのぬいぐるみがあるんですが、アデリーヌはまるであのクマを生きてるかのように扱うのです。
それどころか、『ティアナがこれから雨が降るって言った』なんてことを…あ、ティアナっていうのはクマの名前なんですが、そんなことを言うんです。」
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