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ルカ(聖夜月ルカ)

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055 : 果樹園

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「ええ、おかげさまで…
記憶が戻らないことをのぞけば、あとはなんともありません。」

「そうかい、それは良かったな。
じゃ、しっかり働いてくれよ!
それと、あんたら住む所は決まってるのか?」

「いえ…まだなんですが…」



果樹園の主人ヤニックは、私達がここで働く事を半ば強制的に決めてしまったようだ。
それは、私達にとっても好都合なので特に問題はない。
ちょうど、果樹園の管理部屋のような所が空いているので、そこを使うようにと言ってくれた。
給金も悪くはない。
ただ、仕事はきついから覚悟しとくようにと言われたが、それは当然のことだろう。

クロワは薬売りがあるため、週の半分だけ働く事になった。
そんな事があれこれと決まった頃、息を切らしたリュックが駆け戻って来た。



「うちの果樹園はどうだった?」

「あぁ、たいしたもんだな!!」

「リュック、しばらくここで働かせてもらうことになったぞ。
住む所も用意して下さった。」

「そうかい。
それは助かるぜ!」

「じゃあ、早速明日からでも…」

「残念だが、俺とマルタンは急な用が出来た。
多分、数日で戻ってこられると思うから、それから働かせてもらうぜ。
クロワさん、そういうことだからよろしく頼むよ!」

「急用って…一体、何の話なんだ?」

「善は急げだ!
よし、マルタン、行くぜ!!」

「リュック、ちょっと待てよ!」

クロワとヤニックが呆然と立ち尽くす中、私はリュックに腕をひっぱられて行く。



「待てよ、リュック!
どこへ行くつもりなんだ?」

「ついて来ればわかるって…」

リュックはそう言うだけで、確かな目的地を教えてはくれなかった。



町を出て、今しがた歩いて来た道を後戻る。

ひたすらに急ぎ足で歩き続け、次の町に着いた頃にはあたりはすっぽりと闇に包まれていた。



「なんとか今日中にここまで来れて良かったぜ。
マルタン、腹がすいただろう?
どこかで何か食べようぜ。」

「腹はすいてるが…それよりも疲れたぞ。
私は君みたいに若くはないんだからな。」

「何を言ってやがる。
まだ俺の半分も生きちゃいないくせに。
そんなことより、早く行こうぜ!」

私達は一軒の酒場に入り、酒と食べるものを注文した。

 
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