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054 : 轍
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私達は、山を下り、もと来た道を戻って行った。
ジョセフに会い、海底神殿の事を聞くだけのはずが、思いがけず長居をすることになってしまった。
ここを通る時にはそんなこと等、少しも考えてはいなかった。
町で一泊した後、私達はその先の大きな町を目指して歩き始めた。
進んで行くうちに、道幅はどんどん広くなっていく。
「クロワさん!
俺達、今度の町に着いたら働くからな!」
「働くって…どうして?
薬売りがいやになったの?」
「そうじゃないんだ。
ただ、じいさんの話によると、海底のものを探すには相当な金がかかるってことじゃないか。
それで、マルタンと話し合って、俺達も何か仕事を探して少しずつ金を貯めようってことにしたんだ!」
「そうだったの…
今、向かってる町は大きな町みたいだから、なにか良い仕事がみつかるかもしれないわね。
そういうことなら、私もこれまで以上に頑張って稼がなくっちゃね!」
リュックが加わったことで、私達の旅は少しずつ変化してきていた。
余裕のようなものが出来てきたような気がする。
今までも行く宛の決まらない旅ではあったが、なぜだかそれまでは先に進むことを目標のように行動していた。
一所に留まることが、まるで良くないことのように感じていた。
そういう気持ちが、最近は薄らいできたのだ。
海底神殿を探すという旅の目的が決まり、そして、リュックにはもしかしたら誰よりも人生の残り時間が少ないかもしれないということがわかっているというのになぜだろう…
本来ならば、今までよりさらに先を急ぎたくなりそうなものなのに…
荷馬車の轍の跡を辿っていくうちに、私達はいつの間にか町に着いていた。
ジョセフに会い、海底神殿の事を聞くだけのはずが、思いがけず長居をすることになってしまった。
ここを通る時にはそんなこと等、少しも考えてはいなかった。
町で一泊した後、私達はその先の大きな町を目指して歩き始めた。
進んで行くうちに、道幅はどんどん広くなっていく。
「クロワさん!
俺達、今度の町に着いたら働くからな!」
「働くって…どうして?
薬売りがいやになったの?」
「そうじゃないんだ。
ただ、じいさんの話によると、海底のものを探すには相当な金がかかるってことじゃないか。
それで、マルタンと話し合って、俺達も何か仕事を探して少しずつ金を貯めようってことにしたんだ!」
「そうだったの…
今、向かってる町は大きな町みたいだから、なにか良い仕事がみつかるかもしれないわね。
そういうことなら、私もこれまで以上に頑張って稼がなくっちゃね!」
リュックが加わったことで、私達の旅は少しずつ変化してきていた。
余裕のようなものが出来てきたような気がする。
今までも行く宛の決まらない旅ではあったが、なぜだかそれまでは先に進むことを目標のように行動していた。
一所に留まることが、まるで良くないことのように感じていた。
そういう気持ちが、最近は薄らいできたのだ。
海底神殿を探すという旅の目的が決まり、そして、リュックにはもしかしたら誰よりも人生の残り時間が少ないかもしれないということがわかっているというのになぜだろう…
本来ならば、今までよりさらに先を急ぎたくなりそうなものなのに…
荷馬車の轍の跡を辿っていくうちに、私達はいつの間にか町に着いていた。
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