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053 : 無二の相棒
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「なんだ、こんな所にいたのか…」
「マルタン…」
リュックは草笛の聞こえるあの草原の片隅で膝を抱えていた。
いつものようにどうせすぐに戻って来るだろうと思ったのだが、想いの外帰りが遅かったので、つい気になって探しに来てみたのだ。
「何してるんだ?こんな所で…」
「見ての通り、何もしちゃいないさ。」
「リュック…さっきのことなら…」
「あんなことはどうでも良いんだ。」
「じゃあ、なぜ…」
「なんでだろうなぁ…」
私もリュックの傍らに腰を降ろした。
「マルタン…俺は、長い間一体何をしてたんだろうな…
人の何倍も生きて…
なのに、俺は何も出来ない。
なにも、知らない。
……今まで、俺はたくさんの時間を無駄にしてきたんだな。」
「……それは、きっと君には有り余る時間があったからだろうな…」
「有り余る時間…?」
「そうだ。正確には永久に続く時間ということか…
時間でも金でもこの世のものはなんでも使えば少なくなっていく。
少なくなればなるほど、人はそれを大切に想い、少しでも有意義に使いたいと感じるものじゃないだろうか…
だが、いくら使ってもなくならないとわかっていれば、それを大切には感じない。
むしろ、無駄に使ってみたくなるもんじゃないかと思う。
無駄に使っても減らないそれに苛立ちを感じるかもしれないな。」
「……なるほどな。」
「君は小人の呪縛から離れることを決意した時から、今までいくら使ってもなくならなかった『時間』というものに限りが出来たことに気付いたんだ。
生きてるうちにいろんなことをしてみたい、いろんなことを知りたい…そんな気持ちが目覚めた…いや、よみがえったんじゃないだろうか?」
「……その通りだな、マルタン!きっとそうなんだ…
今は、あの頃の無駄な時間がもったいなくてたまらない。
俺は、なんで長い間、あんなくだらない暮らし方をしていたんだろうって悔しくてたまらなくなるんだ。
何かを覚えようとか、何かを考えるとか、そんな気持ちもなく、毎日ただ食べて飲んで寝るだけ…
俺は動物以下の人間だったんだ。」
「君のような境遇になれば、誰だってきっとそうなるさ。」
「マルタン…」
リュックは草笛の聞こえるあの草原の片隅で膝を抱えていた。
いつものようにどうせすぐに戻って来るだろうと思ったのだが、想いの外帰りが遅かったので、つい気になって探しに来てみたのだ。
「何してるんだ?こんな所で…」
「見ての通り、何もしちゃいないさ。」
「リュック…さっきのことなら…」
「あんなことはどうでも良いんだ。」
「じゃあ、なぜ…」
「なんでだろうなぁ…」
私もリュックの傍らに腰を降ろした。
「マルタン…俺は、長い間一体何をしてたんだろうな…
人の何倍も生きて…
なのに、俺は何も出来ない。
なにも、知らない。
……今まで、俺はたくさんの時間を無駄にしてきたんだな。」
「……それは、きっと君には有り余る時間があったからだろうな…」
「有り余る時間…?」
「そうだ。正確には永久に続く時間ということか…
時間でも金でもこの世のものはなんでも使えば少なくなっていく。
少なくなればなるほど、人はそれを大切に想い、少しでも有意義に使いたいと感じるものじゃないだろうか…
だが、いくら使ってもなくならないとわかっていれば、それを大切には感じない。
むしろ、無駄に使ってみたくなるもんじゃないかと思う。
無駄に使っても減らないそれに苛立ちを感じるかもしれないな。」
「……なるほどな。」
「君は小人の呪縛から離れることを決意した時から、今までいくら使ってもなくならなかった『時間』というものに限りが出来たことに気付いたんだ。
生きてるうちにいろんなことをしてみたい、いろんなことを知りたい…そんな気持ちが目覚めた…いや、よみがえったんじゃないだろうか?」
「……その通りだな、マルタン!きっとそうなんだ…
今は、あの頃の無駄な時間がもったいなくてたまらない。
俺は、なんで長い間、あんなくだらない暮らし方をしていたんだろうって悔しくてたまらなくなるんだ。
何かを覚えようとか、何かを考えるとか、そんな気持ちもなく、毎日ただ食べて飲んで寝るだけ…
俺は動物以下の人間だったんだ。」
「君のような境遇になれば、誰だってきっとそうなるさ。」
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