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ルカ(聖夜月ルカ)

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049 : 草笛の響き

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ローズに叩かれないように、しばらくそのままで黙って座っていたが、やはりなにも起こらない。



(マルタン…!)

「こりゃ!しゃべるなって言っとるじゃろう!」

「痛っっ!」

ローズがリュックの頭をはたいた。



その時だった…
微かに響く音が聞こえたのは…



「今のは…?!」

「しっ!」



 私達が耳を澄ませていると、やはり聞こえる…草笛の音だ…
何の曲かはわからないが、とても、寂しげな…悲しい音色の草笛だ…



しばらくすると草笛の音は途切れた。



「……さぁ、帰るとするか…」



そう言うと、ローズは衣服についた草を払って立ちあがる。



「良い曲だったよ。どうもありがとうよ!」



草原に向かって声をかけるローズに倣い、私達も口々に礼を述べて家路に着いた。



 「あの草笛を聞かせてくれるのが目的だったんだな。
あれは誰が吹いてるんだ?」

ローズはまたもリュックの問いを無視して鼻歌を歌っている。
 先ほどの草笛のあのメロディだ。



「ちぇっ!
また聞こえない振りか…
本当に変わったばあさんだぜ。
 変わったといえば、あんな暗いところでランプも付けずに草笛を吹くなんて、ずいぶんと変わった奴もいるもんだな。」



リュックのその言葉に、私は不安なものを感じてしまった。



(……まさか……!)



「ローズさん、先ほどの草笛はまさか…!」

「あんたにはもうわかったようじゃな…」

「なんだよ、なんだよ!
マルタン、なにがわかったっていうんだよ。」

「あれはな…
幽霊の草笛なんじゃ…」

「えっ!?な、なんだって!!」

「頭の悪い男じゃな。
あの草笛は幽霊が吹いとると言うとるんじゃ!」

「そ…そんな馬鹿な…」

「この島に出るのはな、枯れ井戸のべっぴんさんだけじゃないんじゃ。
いろんな所でいろんな者を見たという人がおる。
あの草笛も、吹いてる姿は見たことはないが、あの音色だけはよく聞こえるんじゃ…」

「そ、そんな…
誰かが隠れて吹いてるんじゃないのか?」

「この島には六人しか住んどらんと言うたじゃろ。
それもみんな年寄りばっかりじゃ。
誰がこんな夜更けにあんな真っ暗な草原で草笛を吹くというんじゃ!」 
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