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ルカ(聖夜月ルカ)

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048 : 枯れ井戸のウワサ

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 「さてと…
もうあそこからじゃあ、見えねぇだろうな…」

「何のことだ?」

「……こういうことさ!」



男は振り向き様に、エディに向かって鋭く長い刃を振り下ろした。



エディは一言も発する事無く、その身体からはまるで噴水のように真っ赤な鮮血が噴き出した。
 村人達はその様に悲鳴を上げながら逃げ惑う。
それを追い、海賊たちは、一人、また一人と村人達に剣を振り下ろす。



「女は殺すなよ~!
男はみんな殺っちまえ!」



返り血に赤く染まった海賊達は、まるで狩りを楽しむかのように歓声をあげて地獄のような殺戮を繰り返していく。
わざわざ家の中を確認し、生きてる者をみつけたら、それが老人だろうと小さな子供だろうと無慈悲に斬りつけた。
 若い女達だけは生きたままで捕らえられ、一所に集められた。



「なんだ…女はたったこれっぽっちか…」



あたりに響くのは、捕らえられた女達のすすり泣く声だけ…
逃げ惑う人々の声はもう聞こえない…
あたりには血生臭いにおいがたちこめ、ついさっきまで元気な顔を見せていた人々が物のように転がっている。



「暴れたら腹が減ったな。
よし、少し腹ごしらえしてから、宝を探すとするか。」

「女はどうする?」

「仕事が先だ!夜まで待てよ!」



男達は、適当な家の中に入り、宴に興じる。
血の池に横たわる亡骸の前で食事をし酒を飲み、自分達のやり遂げたことを誇らしげに語り合い笑った。



「さ、酒はこのくらいにして暗くなる前に宝を探すぞ!」



海賊達は手分けをして宝を探した。
こんな狭い村だ。
すぐにみつかるだろうと考えていたのだが、宝はどこからもみつからなかった。



「どこにもないぜ!
本当にこの島に船は流されたのか?」

「あぁ、もちろんだ!間違いねぇ!
絶対にあるはずだ。もう一度、隈なく探すんだ!」



海賊達は再び村の中を探したが、それでもやはり宝はみつからなかった。



「おい…本当にここには船は着かなかったんじゃないのか?」

「そ、そんな…もし着いてなかったらどうなるんだ?
関係ない島の者達にこんなひでぇことしたことがお頭にバレたら、俺達どうなっちまうんだ?」

「い、今更、そんなこと言ってどうなる!
やっちまったことは仕方ねぇじゃないか!」

「だ、だいたい、お前が必ずここに宝があるっていうから俺達は…」
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