お題小説

047 ： 佳人

３

数え切れない程の長い歳月を、彼は暗い孤独の闇の中で生きてきたのだと思うと、胸が絞めつけられる想いだった。
彼は、誰にも言えない恐怖を胸に抱いたまま、ずっと一人で闘ってきたのだ。
彼は強い…
私だったら、とっくに心が壊れてしまっていたかもしれない…



「………リュック！昼寝でもしたらどうなんだ？
昨夜はおかしな夢のせいで、あんまりよく眠れなかったんじゃないのか？」

彼への想いが大きくなり過ぎ、彼にかける言葉がみつからないままに私はそんなことを口走っていた。



「あ…あぁ、そうなんだ…そうだな。
どうせやることもないし、そうするよ。」

リュックは私に背中を向けたままそう言うと、その場にごろんと横になった。

私は、彼の邪魔してはいけないと思い、外へ出た。
特にあてもなかったため、そのあたりをぶらぶらと一回りして時間を潰した。
しばらくして戻って来ると、リュックはすやすやと静かな寝息をたてながら眠っていた。

私も特にすることがなかったため、リュックから少し離れた所に横になりうとうとしかけた頃、リュックの叫び声で起こされた。



「リュック！どうした？！」

「ま…また、あの女の人が…」

そういうリュックの顔は汗でぐっしょりと濡れていた。



「また同じ夢を夢を見たのか？」

リュックは黙って深く頷いた。