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ルカ(聖夜月ルカ)

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046 : 虜囚の誓い

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「どうした、リュック!?」

リュックのただならぬ叫び声に誘われ、私達は次々に穴の中へ入って行った。



「こ、これは……!!」


足を踏み入れてすぐの所にあったものは、私達の期待していた宝等ではなかった。




「これは相当古いもんじゃな…」

ジョセフは、その場に腰を落とし、まじまじとそれを見つめている。
そこにあったもの…それは、すでに茶色く色を変えた一体の人骨だったのだ。



「可哀想に…きっと、急に崩れたんだろうな。」

「そうだろうな、必死に出ようとしたんだろうが、その前に窒息死してしまったんだろう…」

「おや…こいつは囚人じゃな。」

ジョセフの言う通り、その人骨の足首には、丸い鉄の錘が鎖で繋がれていた。



「じゃ、ここは監獄かなにかだったってのか?」

「いや、監獄ではなさそうじゃ。きっと、捕虜のような者をここで働かせてたんじゃないか?」

「なるほどな…
しかし、ひどい話じゃないか。
いくら捕虜でも、土砂崩れにあったのを助けないとは…」

「助けなかったのか助けられなかったのかはわからんが…ほんに気の毒なことじゃのぅ…」

 私達は、その場に立ち尽くし、誰ともわからない人間の亡骸をただみつめていた。



「……この人を、どこかに埋葬してあげましょうよ。」

「えっ!……そ、そりゃあ、そうした方が良いだろうが…
……しかし、気味が悪いなぁ…」



そう言って、躊躇しているリュックの身体を押し退け、クロワは人骨を拾いあげた。



「うわっ!クロワさん、あんた、そんなもんさわって平気なのか!」

クロワは返事をすることなく、骨を拾い集めている。 私も手伝おうと思うのだが、リュック同様なんとなく薄気味の悪いものを感じ、手を出しあぐねていた。
そんな私達を見かねたのか、ジョセフがクロワを手伝い始めた時…



「あらっ…?」

クロワが骨の下からみつけたものは鈍い色をした銀色の鍵だった。



「何かしら、これ?」

クロワの差し出した鍵をジョセフが手に取った。

 
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