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ルカ(聖夜月ルカ)

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044 : 隠れ里

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「すげぇな、爺さん!
もしかしたら、あんたがここを作ったのか?」

「まさか!こんなもん作ってたら、どれほどの時間がかかることか…
わしは、若い頃からいろんな町を渡り歩いて、宝捜しのようなことをしていてな…
……なんじゃ?そんなことはもうとっくに知ってるって顔だな。」

 私達は素直に頷いた。



「そうなんだ、俺達はそのことであんたに話を聞きに来たんだ。
でも、その前にここのことを教えてくれよ。」

「あぁ…、それでな、ある時、ある町でわしは面白い話を聞いた。
 海賊の子孫の隠れ里の噂じゃった。
その村は山の奥深くにあり、そこには今でもものすごい財宝が眠っているということだったんじゃ。」

「それで、その隠れ里はみつかったのか!?」

「落ち着け。今、話すところじゃ!
わしはその話を聞いて、すぐに隠れ里を探し始めた。
そして行きついたのがここじゃったんじゃ。」

「え?!ここが?」

リュックは目を丸くして、声を上げた。



「そう…今ではよくわからなくなってしもうたが、その当時はまだかろうじてわかる廃屋もあったんじゃ。
きっと、ここが隠れ里に違いないと思い、わしは財宝を探したがどこにもみつからんかった。
しかし、その最中にこの場所をみつけたんじゃ。
隠れ里の中の隠れ家じゃ…きっとここが長の住まいだったに違いない。
ということは、この場所に財宝があるんじゃないかと思ったが、ほれ、見ての通りじゃ。
結局、財宝なんざ、みつからなんだ。
きっと、もう誰かが先にみつけてしまったんじゃろなぁ…
それから、わしはまた別のお宝を探しに旅に出たんじゃが、年を取ってからなぜだかここのことを思い出してな。
そうじゃ、あの場所で暮らそう!ということでここにやって来たということじゃ。」

「なるほどな…でも、本当にここが隠れ里なのか?
なにか証拠みたいなものはみつかったのか?」

「証拠と言われると困るが……しかし、聞いた話によるとどう考えてもこの山なんじゃ。
さっきも言った通り、このあたりには集落があった形跡がある。
こんな山奥にだぞ。
そうなりゃ、やっぱりここだと思わんか?」

「言われてみりゃあそうだな。
じゃあ、やっぱり爺さんは誰かに先を越されたってことなんだな?」

「残念ながらそういうことなんじゃろうなぁ…」

「ま、たまにはそういうこともあるさ。
でも、余生を過ごす場所としちゃあ、確かに良い所だもんな。
不便ってことを除けば…だけど。」


 
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