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ルカ(聖夜月ルカ)

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043 : たき火をかこんで

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 「なぁ、もしかしたらもう通り過ぎてしまったんじゃないのか?」

私達は、ポズナー氏から聞いた三つ程先の町を目指して旅をしていた。
数日歩けば着くのだろうと簡単に考えていたのだが、町から町の間がやたらと長い。
しかも、その間にはなにもない平坦な街道が延々と続くばかりなのだ。
そのため、数日は野宿を余儀なくされた。
まだ天気が良く、さほど寒くもなかったから良かったようなものの、これが寒い時期や雨だったらどうなっていたことだろう…



「まさか。
街道沿いにずっと歩いて来たんだから、見落とすはずはないと思うのだが…」

「こんな遠いなら、最初からそう言ってほしかったよな。」

「そうだわ!きっとポズナーさん達は馬車で移動されたのね。
だから、ご本人達もそんなに遠いと思われなかったんじゃないかしら?」

「そうですね。
いくつ町を通り過ぎたかもはっきりとはおわりではないようでしたからね。
……もしくは私達がまさか徒歩で行くとは思ってなかったか…」

「きっと、マルタンの言う方だな。
金持ちの頭の中には、歩いて旅をするなんてこと、欠片もないんだろうよ。」

「歩くのもいいじゃないか。
自分の足で歩いた方が、いかにも旅をしてるって気分になれないか?」

「よく言うよ。
でも、ま…確かに楽しくないわけじゃないけどな。
あんた達と一緒だからかもしれないけど…」

「まぁ、リュックらしくない発言ね!」

「俺は今まで、一人で旅することが多かったからな。」

「そうなの?」

「ま、あれは旅っていうか、なんていうか…
……どうでも良い話さ。」


リュックの頭の中には、今、小人のいる森に通っていた頃のことが浮かんでいるのだろう…
行きたくない気持ちと、行かなかった時にどうなるかという不安を胸に抱きながら、人目を避けるように通ってたあの頃を…



「リュック!見ろ!
あそこに町が見えて来たぞ!」

「あ!本当だ!!
やっと、着いたのか?!」



リュックは、まるで子供のように瞳を輝かせながら駆け出していく。

 
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