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039 : 終の棲家
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彼…ジルベールは、私達を食堂に通し、冷えたシャンパンと食べるものを用意してくれた。
「素晴らしきオペラに乾杯!…と、いった所でしょうか。」
「その通りだな!
オペラに乾杯だ!」
私達は上機嫌でグラスを合わせた。
冷たいシャンパンがほてった顔と喉に心地良く染みていく。
ジルベールは昔からのオペラファンだということだった。
バスティア家と昔から知り合いで、ある時、あの地下庭園でのオペラを見たことからその虜になってしまったのだという。
通常のホールとは一際違う不思議な空間でのステージに魅了され、彼は自宅を売りこの地に越してきたのだそうだ。
同じくオペラ好きだった夫人と、生きている限り、地下庭園でのオペラを見るために、ここに居を構えたのだ。
しかし、夫人は二年前に亡くなってしまい、今は一人で通っているのだという。
「今回は出しものも良かったですが、あなた方のような人に出会えたことも嬉しい出来事でした。」
「どういうことですか?」
「いえ…なんともうしますか…
あそこに来る人々は、皆、気位が高いと言いますか…
話しにくい人達が多いのですよ。」
「実は、私達は運良くこのチケットをタダで手に入れることが出来まして…
貴族でも金持ちでもない場違いな人間ですからね。」
「この服も、宿の主人に借りて来たんだぜ。
俺は、こんなごたいそうな式服なんて持っちゃいないからな。」
「なるほど、そうでしたか。
しかし、あのチケットをタダで手に入れることが出来たとは…
あなた方はよほど運の良いお方だ。」
「下世話な話ですが…
このチケットは、本来ならおいくらなのですか?」
言葉を濁すジルベールをリュックがしつこく問いただし、私達はその値段をきいて驚いた。
いや、にわかには信じられなかった。
「そんなにするもんなのか!!…マルタン、良いのかな、そんな高いものをもらってしまって…」
「そうだな…
しかし、そうはいってもとてもじゃないが私達に払える金額ではないぞ。」
「それはそうだが…」
「そのチケットはどういう経緯で手に入れられたのですか?」
私は、遠くの町から来た夫婦のことやクロワのことを彼に話した。
「素晴らしきオペラに乾杯!…と、いった所でしょうか。」
「その通りだな!
オペラに乾杯だ!」
私達は上機嫌でグラスを合わせた。
冷たいシャンパンがほてった顔と喉に心地良く染みていく。
ジルベールは昔からのオペラファンだということだった。
バスティア家と昔から知り合いで、ある時、あの地下庭園でのオペラを見たことからその虜になってしまったのだという。
通常のホールとは一際違う不思議な空間でのステージに魅了され、彼は自宅を売りこの地に越してきたのだそうだ。
同じくオペラ好きだった夫人と、生きている限り、地下庭園でのオペラを見るために、ここに居を構えたのだ。
しかし、夫人は二年前に亡くなってしまい、今は一人で通っているのだという。
「今回は出しものも良かったですが、あなた方のような人に出会えたことも嬉しい出来事でした。」
「どういうことですか?」
「いえ…なんともうしますか…
あそこに来る人々は、皆、気位が高いと言いますか…
話しにくい人達が多いのですよ。」
「実は、私達は運良くこのチケットをタダで手に入れることが出来まして…
貴族でも金持ちでもない場違いな人間ですからね。」
「この服も、宿の主人に借りて来たんだぜ。
俺は、こんなごたいそうな式服なんて持っちゃいないからな。」
「なるほど、そうでしたか。
しかし、あのチケットをタダで手に入れることが出来たとは…
あなた方はよほど運の良いお方だ。」
「下世話な話ですが…
このチケットは、本来ならおいくらなのですか?」
言葉を濁すジルベールをリュックがしつこく問いただし、私達はその値段をきいて驚いた。
いや、にわかには信じられなかった。
「そんなにするもんなのか!!…マルタン、良いのかな、そんな高いものをもらってしまって…」
「そうだな…
しかし、そうはいってもとてもじゃないが私達に払える金額ではないぞ。」
「それはそうだが…」
「そのチケットはどういう経緯で手に入れられたのですか?」
私は、遠くの町から来た夫婦のことやクロワのことを彼に話した。
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