お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
312 / 641
037 : 影の石

しおりを挟む
そして、その次に照明がついた時には舞台は森の中でのシーンになっていた。

仮面の騎士は、見事、姫を城から連れ出すことに成功したのだ。

初めて会った時から、一目であなたのことを愛してしまったと告白する仮面の騎士に、私も同じ気持ちだったと答える姫。
交互に歌われる二人の声はまるで絡みつくようにしなやかで艶やかだ。

仮面の騎士は、魔法使いの呪いによって少年の頃からずっと仮面を付けたままで暮らしており、今までは誰一人として自分に言葉をかけてくれる者さえいなかった…と、自分の過去を歌い出す。
しかし、姫は、森で出会った時にもまるで脅えることなく、優しく声をかけてくれた。
私はあの時からあなたを愛してしまった…という仮面の騎士の愛の告白に続き、
私はあなたの瞳を見た時にそれだけで恋に落ちた。
誰よりも深い慈愛に満ちたその青い瞳にあなたのすべてを見たように感じた…と、姫の澄みきった高い声が応える。
そして、二人は強く抱きあい、仮面越しに唇を重ねる。
すると、突然、ガラスが割れるような効果音が響き渡り、仮面の騎士の仮面がまっぷたつに割れた。

仮面の下から現れた男性の顔は、まるで神話に出て来る神々の彫刻のように美しい男性だったのだ。
二人は再び抱き合い、唇を重ねる。

そして、森の中での二人っきりの幸せな時が表現される。
今までとは違い、幸せに満ちた二人の心を表す明るい曲調の歌が続く。

しかし、三日目の夜にあの憎らしい魔女が二人の元へやって来る。
仮面の騎士は、影の石をもらう代償として魔女に命を渡す約束をしてしまったことを姫に打ち明ける。
悲しみに暮れる姫は、魔女に懇願する。
私達はもう離れることは出来ない。
私達を一つの星にして下さい…と…
その代わりに私の命を差し上げます…と。

魔女は姫の願いを聞きいれた。

 
しおりを挟む

処理中です...