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035 : 仮面の騎士
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赤いビロードの幕がするすると開くと、そこは城の中のシーンになっていた。
客席から拍手が沸き上がるのを見て、私達もまわりと同じように拍手を送った。
舞台とはいえ、そこで使われている物はすべてが一流のものではないかと思えた。
一切の手抜きが感じられない。
バルコニーのような場所に、美しい長い髪の女性が登場し、そこでまた大きな拍手が巻きおこる。
女性はきらびやかな宝石を身に付け青いドレスを纏っている。
おそらくは、この城の姫君という設定なのだろう。
楽団の演奏が始まり、女性が、その場で歌を歌い出した。
なんという声だろう…!
まるで胃の腑が震えるようだ。
当然、本職のオペラ歌手の声量のすごさもあるのだろうが、この地下庭園は、程よく音が反響するようにも設計されているようだ。
そういえば、ここの扉があんなに厚く重そうだったのはきっと外に音を漏らさないためなのかもしれない。
「マルタン!これだ!この歌だ!」
リュックが興奮した声で私の腕を揺さぶった。
かなりの大声を出しているようだが、その声はステージの女性の声にかき消されている。
私はリュックに静かにするようになだめた。
姫君は愛する男性がいるが、それはどこの誰ともわからない男。
城を抜け出して遊びに行った時に森で出会った男なのだが、姫は一目でその人を愛してしまい、それ以来片時もその人を忘れる事は出来なくなった。
もう一度会いたいと思うのだが、なかなか城の外へは出してはもらえない。
思い余った姫は父親である国王にそのことを話すが、王がそんなことを許す筈もなく、姫はもうすぐ父親の決めた男と結婚させられる。
そんなストーリーを歌った曲だった。
ふと、リュックの方を見ると、感動しているのか瞳にいっぱいの涙を貯めてステージの彼女を食い入るように見つめている。
舞台が暗転し、今度は森の中のシーンに変わった。
そこには仮面を付けた騎士が佇み、そして浪々とした低い声が響き出した。
仮面の騎士は姫への愛を歌う。
一目で好きになった人がこの国の姫であることを知った時の衝撃、そして諦めようと葛藤したがどうしても忘れられないという苦しみを…
そして、たとえ、殺されようとも姫に自分のこの気持ちを打ち明ける決心が固まったことを切々と歌い上げていく…
客席から拍手が沸き上がるのを見て、私達もまわりと同じように拍手を送った。
舞台とはいえ、そこで使われている物はすべてが一流のものではないかと思えた。
一切の手抜きが感じられない。
バルコニーのような場所に、美しい長い髪の女性が登場し、そこでまた大きな拍手が巻きおこる。
女性はきらびやかな宝石を身に付け青いドレスを纏っている。
おそらくは、この城の姫君という設定なのだろう。
楽団の演奏が始まり、女性が、その場で歌を歌い出した。
なんという声だろう…!
まるで胃の腑が震えるようだ。
当然、本職のオペラ歌手の声量のすごさもあるのだろうが、この地下庭園は、程よく音が反響するようにも設計されているようだ。
そういえば、ここの扉があんなに厚く重そうだったのはきっと外に音を漏らさないためなのかもしれない。
「マルタン!これだ!この歌だ!」
リュックが興奮した声で私の腕を揺さぶった。
かなりの大声を出しているようだが、その声はステージの女性の声にかき消されている。
私はリュックに静かにするようになだめた。
姫君は愛する男性がいるが、それはどこの誰ともわからない男。
城を抜け出して遊びに行った時に森で出会った男なのだが、姫は一目でその人を愛してしまい、それ以来片時もその人を忘れる事は出来なくなった。
もう一度会いたいと思うのだが、なかなか城の外へは出してはもらえない。
思い余った姫は父親である国王にそのことを話すが、王がそんなことを許す筈もなく、姫はもうすぐ父親の決めた男と結婚させられる。
そんなストーリーを歌った曲だった。
ふと、リュックの方を見ると、感動しているのか瞳にいっぱいの涙を貯めてステージの彼女を食い入るように見つめている。
舞台が暗転し、今度は森の中のシーンに変わった。
そこには仮面を付けた騎士が佇み、そして浪々とした低い声が響き出した。
仮面の騎士は姫への愛を歌う。
一目で好きになった人がこの国の姫であることを知った時の衝撃、そして諦めようと葛藤したがどうしても忘れられないという苦しみを…
そして、たとえ、殺されようとも姫に自分のこの気持ちを打ち明ける決心が固まったことを切々と歌い上げていく…
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