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031 : 呪縛
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*
「マルタン!そろそろ起きたらどうなんだ?!」
リュックの声で目が覚めると、昨日の酒のせいか、頭が軽く痛んだ。
「君は、あれだけ飲んでもなんともないのか?
ずいぶんと元気なんだな。」
「…きっと、ちびのくれたあの緑の玉のおかげなんだろうな。」
「そうか…」
……しかし、それをやめたら…
少なくとも、こんな風に元気でいられることはないだろう…
それだけなら良いのだが、どんなことが起こるかわからないのだ。
私は理想論を語っただけなのかもしれない。
リュックの心の中にある深い恐怖をわかってやれていなかったのではないかと思った。
「朝食が出来てるぜ!」
リュックの人懐っこい笑顔を見るのが辛い。
(私はとんでもないことを言ってしまったのかもしれない…)
「じゃ、私は町でクロワを探してくる。」
朝食をすますと私はすぐに出かける準備をした。
「……俺も一緒に行くよ。」
「心配しなくても良い。
君の気持ちを聞くまでは、勝手に出発したりはしないから。」
「大丈夫だ、マルタン。
俺の気持ちはもうしっかりと固まっている。」
「……しかし…君の命に関わることなんだぞ。
もっと、じっくり考えた方が良い。」
「大丈夫だ!
マルタン…よく考えてみろよ。
俺はこれでもあんたよりずっと長く生きてるんだぜ!
自分の気持ちがわからない年じゃない。」
「それはそうだが…」
「正直言うとな…
考えるとまた気持ちがぐらつきそうなんだ…
でも、あんたに巡り合えたのはきっと最初で最後のチャンスだ。
これを逃したら…俺は、一生、自分で決める事は出来ない。
だから、俺は行くぜ!」
「……そうか、わかった…」
それが正しい選択だったかどうかはわからない。
しかし、私は彼のその気持ちを大事にしたいと思った。
クロワにはリュックの詳しい事情は話さないことにした。
時が来れば、言わなくてはならない事になるかもしれない。
しかし、それまでは、山でたまたま知り合った青年だということにしておくことに決めた。
*
「マルタンさん!!」
「クロワさん、心配をおかけしてしまってすみません。」
町に着くなり、クロワが私のことを発見して駆け寄って来た。
「マルタン!そろそろ起きたらどうなんだ?!」
リュックの声で目が覚めると、昨日の酒のせいか、頭が軽く痛んだ。
「君は、あれだけ飲んでもなんともないのか?
ずいぶんと元気なんだな。」
「…きっと、ちびのくれたあの緑の玉のおかげなんだろうな。」
「そうか…」
……しかし、それをやめたら…
少なくとも、こんな風に元気でいられることはないだろう…
それだけなら良いのだが、どんなことが起こるかわからないのだ。
私は理想論を語っただけなのかもしれない。
リュックの心の中にある深い恐怖をわかってやれていなかったのではないかと思った。
「朝食が出来てるぜ!」
リュックの人懐っこい笑顔を見るのが辛い。
(私はとんでもないことを言ってしまったのかもしれない…)
「じゃ、私は町でクロワを探してくる。」
朝食をすますと私はすぐに出かける準備をした。
「……俺も一緒に行くよ。」
「心配しなくても良い。
君の気持ちを聞くまでは、勝手に出発したりはしないから。」
「大丈夫だ、マルタン。
俺の気持ちはもうしっかりと固まっている。」
「……しかし…君の命に関わることなんだぞ。
もっと、じっくり考えた方が良い。」
「大丈夫だ!
マルタン…よく考えてみろよ。
俺はこれでもあんたよりずっと長く生きてるんだぜ!
自分の気持ちがわからない年じゃない。」
「それはそうだが…」
「正直言うとな…
考えるとまた気持ちがぐらつきそうなんだ…
でも、あんたに巡り合えたのはきっと最初で最後のチャンスだ。
これを逃したら…俺は、一生、自分で決める事は出来ない。
だから、俺は行くぜ!」
「……そうか、わかった…」
それが正しい選択だったかどうかはわからない。
しかし、私は彼のその気持ちを大事にしたいと思った。
クロワにはリュックの詳しい事情は話さないことにした。
時が来れば、言わなくてはならない事になるかもしれない。
しかし、それまでは、山でたまたま知り合った青年だということにしておくことに決めた。
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「マルタンさん!!」
「クロワさん、心配をおかけしてしまってすみません。」
町に着くなり、クロワが私のことを発見して駆け寄って来た。
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