お題小説

031 ： 呪縛

１１

「つい今まで元気だった者が、突然、病気や事故で死んでしまうことだってある。
誰も自分がいつどんな風に死ぬかなんてわかるはずがない…
楽に死んでいくものもいれば、苦しみもがきながら死んでいく者もいる。
でも、そんなこと、誰にわかる？
きっと、怖いのは、誰だって同じさ…」

「マルタン…」

「リュック…君にとって一番大切なものは何なんだ？」

「一番大切なもの？」

「君は、すべてを失いたくないと思うから、悩むんじゃないのか？
だから、小人達から離れられないんじゃないのか？
死ぬのは怖い、でも、こうして生きているのも辛い…
君がこの地に、この生活に縛りつけられているのは君が何も手放そうとしないからなんじゃないのか？」

私がそう言うと、リュックは黙りこくったまま、じっと一点をみつめていた。



「偉そうなことを言ってすまない…」

「マルタン…どうしたら、俺は今の生活から抜け出す事が出来る？」

「……そうだな。
まずは勇気を持って選ぶ事じゃないか？
今の生活を続けるのが悪いと言ってるわけじゃない。
ただ、続けるなら…この地にずっと居ついて生き続けるのなら…なにか目的を持って生きてみたらどうだろう？
他の者には出来ないこと…そうだな、普通の人間なら一生かかっても出来ないような果てしなく時間のかかる何かを作り上げるとか…
そうでなければ、小人の所へ行くのをやめ、この地を離れることだ。
ここにいたら君はきっと今の生活から抜け出せない。
どこかに行って、新しい人間として人生をやり直すんだ。」

「しかし、緑の玉をもらわなくなったら…俺は人生をやり直すどころかすぐにも死んでしまうかもしれない。」

「もちろん、そのリスクはあるだろうな。」

「他人事だと思って…あっさり言ってくれるな。」

リュックはそう言って苦笑した。



「いずれにせよ、決めるのは君なんだ。
 君の人生なんだからな。」

「……マルタン、俺…出来る事ならこの場所を離れたい…」

「なら、そうすれば良いじゃないか。」

「だけど…やっぱり俺は怖い…俺にはきっと出来ない。
マルタン…虫の良い話だと思うかもしれないが…俺にあんたの力を貸してくれないか？」

「私の力を？どういうことだ？」