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ルカ(聖夜月ルカ)

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031 : 呪縛

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どうしよう?
今すぐ、逃げ出したらなんとかなるのか?
それとも、みつかった時点でもうだめなのか…?

俺は自分の手の平がじっとりと汗ばんでくるのを感じた。

その時、ちびすけの一人が俺に向かって歩いてくるのが見えた。

俺は、恐怖で心臓が止まりそうになっていた。



「な、なんなんだ…?!」

すると、不意に俺の頭の中に声が響いた。



『そのきのこをくれ。』



きのこ…?

その声を聞いた途端、俺は全身の緊張が解けた。
とても俺を殺そうとしてるような声には感じられなかったから。



「なんだ?おまえら、このきのこがほしいのか?」

ちびは頷いた。



「大丈夫か?かなり臭いぞ。」

俺が、背中のきのこを差し出すとちび共は一斉に集まってきた。
各自がきのこを手にして、とても喜んでいるように見えた。

やがて先程のちびがまた頭の中に話しかけてきた。



『毎月、このきのこを持ってきてくれ。
その代わりにおまえに良いものをやる。』

「良いもの?何なんだ?」

ちびは黙って笑ってるだけだった。



俺は、森での出来事を誰にも話さなかった。
俺自身、あれが現実のことだったかどうかよくわからなかったのだから。
そんな話をしたら、頭がいかれてると思われかねないし、あの森には精霊がいると信じてる者もこのあたりには多いみたいだから、言ったら不謹慎な奴だとも思われるかもしれないから。




次の月、俺は、あの臭いきのこを持って再び精霊の森に行った。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思う反面、今度こそ真相を確かめたいという気持ちがあったんだ。

この前と同じような時刻に同じ道を通った。
ちび共は俺の姿をどこかから見ていたのか、この前、ちび共に会ったあの場所に着くとすぐに俺の前に現れた。



「やっぱり、本当にいたんだな…
また、あのきのこを持ってきてやったぜ!」

きのこを渡すとちび共は子供のような声をあげて喜び、そのうちの一人…多分、この前のちびじゃないかと思うんだが、そのちびが俺に緑色の小さな玉をくれた。
小指の爪ほどもない小さな玉だ。



「なんだ?これ?」

『飲め!』

「これを飲めっていうのか?」

ちび達は騒ぐのをやめ、俺のことをじっとみつめている。

仕方がないので、俺はその玉を口の中に放りこんだ。 
 
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