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ルカ(聖夜月ルカ)

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031 : 呪縛

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待ちに待った港がついに完成した!
それと共に、港から町に続く商店街もほぼ出来上がった。
これからは、この港にあちらこちらからの船が着き、様々な荷が運ばれて来ることだろう。

俺は、山ほど採ったきのこや山菜を持ってよその町に売りに行く。
きのこだなんてショボい商売だと思うかもしれないが、なんといっても元手がタダというのが強みだ。
多少の船賃を使っても、たくさん売れりゃあそれなりの儲けが出る。
なまものだからそれほど遠くには行けないが、俺がこれから行こうとしている町にはほんの数日で着くから心配はない。
その町できのこを売って、織物を仕入れて来るつもりだ。

元はといえば、その町からやってきた商人が、宿屋で食べたきのこ料理にいたく感動していたのを見たからなんだ。
このあたりでは、うんざりするほどきのこがよく採れる。
 俺は、子供の頃からなにかというと食卓にあがるきのこが大嫌いだったが、こういう環境で育ったおかげでどのきのこが毒でどれが食べられるものか、そして、どのきのこがどんな味なのかは熟知していた。
こんなつまらないものを、こんなに喜んで食べる奴がいるのなら、必ず、商売になると俺は感じた。

売りにいくにあたって、このあたりでは誰も採らない独特の匂いがするきのこも採った。
そのきのこはとてもひどい匂いがするんだが、異国ではそんなきのこをうまいと言って好んで食べる奴らもいると聞いたことがあったから。
もしかしたら、これから行く町でも売れるかもしれないと思ったんだ。

俺は船に乗り込み、三日後、港に着いた。
俺が持ちこんだきのこはすぐに買い手がつき、あっという間に売り切れた。
 思った通りだ!
ただ、あの臭いきのこだけは売れなかった。
やはり、もっと遠くまで行かない事にはあんなきのこは売れないんだろう。
いや、もしかしたら、あんなきのこを好む人間がいるなんてことはただのでたらめなのかもしれないな。

俺はきのこを売った金で、織物や小物を買った。
細かい作業で作られた上質なものだが、ここではさほど高くはない。
俺の町にもって帰れば、おそらく倍以上の値で売れる。

 
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