281 / 641
030 : 交易商人
2
しおりを挟む
私達は、町の脇道から山へ向かって歩き出した。
ほんの少し入ったあたりからすぐに、小さいものや大きいものまでいろいろな種類のきのこが生えているのを見かけた。
クロワは、きのこには目もくれずどんどん山の奥の方へ進んで行く。
「やっぱり、ありました!」
予想通り、クロワのお目当ての薬草がみつかったらしく、クロワは嬉々としてその薬草を摘んでいる。
その薬草が珍しいものなのかどうかなんて、もちろん私にはわからない。
クロワと旅を始めてそれなりの時が経ったというのに、私には薬草のことがいまだにまるでわからないのだ。
(薬草よりは、まだきのこの方が覚えられそうだ…)
そんなことを考えながら、ふと、色鮮やかな赤いきのこに気をひかれ手を伸ばそうとした時に、クロワの厳しい声が飛んだ。
「マルタンさん!それは毒きのこです!
さわらないで!」
クロワの声に反応し、私は咄嗟に手をひいた。
いくらなんでも私も採ったきのこをそのまますぐ口に入れるような真似はしないが、やはり手を出すのはやめておいた方が良さそうだ。
もしかしたら触っただけでも、毒の影響を受けるものもあるのかもしれない。
きのこを採ることもだめだとなると、山では私に出来ることはない。
いつものようにあたりをぶらりと散策することにした。
クロワのいる場所を見失わないように真っ直ぐに山の奥へと進んだ。
しばらく進むと、私はそこで意外なものを発見した。
一軒の家をみつけたのだ。
(こんな山の中に、一体誰が…?)
そう考えた時、おもむろに家の扉が開き、中から出てきた若い男と目が合った。
目があったのを無視するわけにもいかず、私は微笑み「こんにちは」と声をかけた。
男はとたんに嬉しそうな笑みを浮かべ、私の方に駆け寄ってきた。
「きのこを採りに来たのか?」
「まぁ、そんな所です。」
わざわざ「いえ、薬草です」と言うこともないと思い、私は適当にそう答えておいた。
「こんな山奥まで来る奴は珍しいぜ!
いや、この山に来る奴自体、めったにいないんだけどな。
…なぁ、ちょっと酒でも飲んでいかないか?」
「えっ?」
「さぁ、さぁ!」
私は男に腕を掴まれ、家の中に引きずり込まれた。
ほんの少し入ったあたりからすぐに、小さいものや大きいものまでいろいろな種類のきのこが生えているのを見かけた。
クロワは、きのこには目もくれずどんどん山の奥の方へ進んで行く。
「やっぱり、ありました!」
予想通り、クロワのお目当ての薬草がみつかったらしく、クロワは嬉々としてその薬草を摘んでいる。
その薬草が珍しいものなのかどうかなんて、もちろん私にはわからない。
クロワと旅を始めてそれなりの時が経ったというのに、私には薬草のことがいまだにまるでわからないのだ。
(薬草よりは、まだきのこの方が覚えられそうだ…)
そんなことを考えながら、ふと、色鮮やかな赤いきのこに気をひかれ手を伸ばそうとした時に、クロワの厳しい声が飛んだ。
「マルタンさん!それは毒きのこです!
さわらないで!」
クロワの声に反応し、私は咄嗟に手をひいた。
いくらなんでも私も採ったきのこをそのまますぐ口に入れるような真似はしないが、やはり手を出すのはやめておいた方が良さそうだ。
もしかしたら触っただけでも、毒の影響を受けるものもあるのかもしれない。
きのこを採ることもだめだとなると、山では私に出来ることはない。
いつものようにあたりをぶらりと散策することにした。
クロワのいる場所を見失わないように真っ直ぐに山の奥へと進んだ。
しばらく進むと、私はそこで意外なものを発見した。
一軒の家をみつけたのだ。
(こんな山の中に、一体誰が…?)
そう考えた時、おもむろに家の扉が開き、中から出てきた若い男と目が合った。
目があったのを無視するわけにもいかず、私は微笑み「こんにちは」と声をかけた。
男はとたんに嬉しそうな笑みを浮かべ、私の方に駆け寄ってきた。
「きのこを採りに来たのか?」
「まぁ、そんな所です。」
わざわざ「いえ、薬草です」と言うこともないと思い、私は適当にそう答えておいた。
「こんな山奥まで来る奴は珍しいぜ!
いや、この山に来る奴自体、めったにいないんだけどな。
…なぁ、ちょっと酒でも飲んでいかないか?」
「えっ?」
「さぁ、さぁ!」
私は男に腕を掴まれ、家の中に引きずり込まれた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい
りゅうじんまんさま
ファンタジー
かつて、『神界』と呼ばれる世界では『女神ハーティルティア』率いる『神族』と『邪神デスティウルス』が率いる『邪神』との間で、永きに渡る戦いが繰り広げられていた。
その永い時の中で『神気』を取り込んで力を増大させた『邪神デスティウルス』は『神界』全てを呑み込もうとした。
それを阻止する為に、『女神ハーティルティア』は配下の『神族』と共に自らの『存在』を犠牲にすることによって、全ての『邪神』を滅ぼして『神界』を新たな世界へと生まれ変わらせた。
それから数千年後、『女神』は新たな世界で『ハーティ』という名の侯爵令嬢として偶然転生を果たした。
生まれた時から『魔導』の才能が全く無かった『ハーティ』は、とある事件をきっかけに『女神』の記憶を取り戻し、人智を超えた力を手に入れることになる。
そして、自分と同じく『邪神』が復活している事を知った『ハーティ』は、諸悪の根源である『邪神デスティウルス』復活の阻止と『邪神』討伐の為に、冒険者として世界を巡る旅へと出発する。
世界中で新しい世界を創造した『女神ハーティルティア』が崇拝される中、普通の人間として平穏に暮らしたい『ハーティ』は、その力を隠しながら旅を続けていたが、行く先々で仲間を得ながら『邪神』を討伐していく『ハーティ』は、やがて世界中の人々に愛されながら『女神』として崇められていく。
果たして、『ハーティ』は自分の創造した世界を救って『普通の女の子』として平穏に暮らしていくことが出来るのか。
これは、一人の少女が『女神』の力を隠しながら世界を救う冒険の物語。
世界に差別されたソロ冒険者、女魔導士に取り憑かれる 〜実質俺以外が戦ってます〜
なかの豹吏
ファンタジー
世界は少数民族である亜人に冷たかった。 ノエルはその亜人と人間のハーフという更に珍しい存在。 故に人間からも亜人からも敬遠されてしまう。
辺境暮しから飛び出し冒険者になったものの、世界の法は亜人に厳しく、パーティ登録が亜人の場合ソロでしか活動出来ないという悪法が定められていた。
しかし、サポートとして唯一許されているのが派遣冒険者。 ノエルは一人では厳しいと感じるクエストに初めて派遣を頼る。
だがそれが、彼の今後を大きく変えてしまう出会いの始まりだったのだ。
シリアス無縁の(ちょっとはあるけど)ギャグラブコメファンタジーの世界で、ふんわりしてみませんかぁ?
※この作品は他サイトでも掲載されています。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する~ブラック商会をクビになったので独立したら、なぜか超一流の常連さんたちが集まってきました~
【お知らせ】
このたび、本作の書籍化が正式に決定いたしました。
発売は今月(6月)下旬!
詳細は近況ボードにて!
超絶ブラックな労働環境のバーネット商会に所属する工芸職人《クラフトマン》のウィルムは、過労死寸前のところで日本の社畜リーマンだった前世の記憶がよみがえる。その直後、ウィルムは商会の代表からクビを宣告され、石や木片という簡単な素材から付与効果付きの武器やアイテムを生みだせる彼のクラフトスキルを頼りにしてくれる常連の顧客(各分野における超一流たち)のすべてをバカ息子であるラストンに引き継がせると言いだした。どうせ逆らったところで無駄だと悟ったウィルムは、退職金代わりに隠し持っていた激レアアイテムを持ちだし、常連客たちへ退職報告と引き継ぎの挨拶を済ませてから、自由気ままに生きようと隣国であるメルキス王国へと旅立つ。
ウィルムはこれまでのコネクションを駆使し、田舎にある森の中で工房を開くと、そこで畑を耕したり、家畜を飼育したり、川で釣りをしたり、時には町へ行ってクラフトスキルを使って作ったアイテムを売ったりして静かに暮らそうと計画していたのだ。
一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる