274 / 641
027 : 月の船
14
しおりを挟む
*
「今回は、思ってた以上にたくさん売れましたね!」
クロワが明るい笑顔でそう言った。
シャトラン開催中は、市は客達がゆっくりと見て回る暇がないほどに大勢の人々で賑わっていた。
クロワの薬も飛ぶように売れ、主に私が店番をして、クロワはその間に薬草を採りに行ったり、薬の調合をしていた。
「これだけあれば、当分の路銀には事欠きませんね。
これもすべてはシャトランのおかげです!」
「そうですね。
こうなったら、私達もシャトランに敬意を表してルールを覚えないといけませんね。」
「えっ!では、ボードと駒を買って来なくては…」
「冗談ですよ。
私はどうもああいう頭を使うゲームには向いていないようです。
ルールの貼り紙を見ても、ちんぷんかんぷんでしたよ。
けっこう難しいものなのですね。」
「シャトランのようなゲームを楽しむには、相当に緻密な神経が必要みたいですね。」
「そう考えると、覇者のマクシムという人は、すごいですね。
十年もの間、王者の座を守り続けたのですから。」
「一体どんな方なのかしら?
薬売りをしていたせいで、結局、試合を見ることは出来ませんでしたね。」
「そうですね。
私が考えるには…神経質なインテリタイプじゃないかと思います。」
「インテリタイプ…そうかもしれませんね。
そういえば、対戦者のラザールさんという方は、たいそう人気のある方のようでしたが。」
「ご婦人達が騒いでおられるのを小耳に挟んだんですが、若くてとてもハンサムな方らしいですよ。」
「そうなんですか。
じゃあ、女性達はきっとラザールさんを応援されてたんでしょうね。」
「そういう方が相手では、マクシムさんもやりにくかったでしょうね。」
町は昨日までの賑わいが嘘のように、ひっそりとしていた。
もうほとんどの者が町を離れたようだ。
おそらく、この町はいつもはこんな感じなのだろう。
シャトランの大会が開催される時だけ、この町は活気付く。
年に一度だけ、十日の間だけ違う町に変わるのだ。
そして、その期間が過ぎ去ると、町はまた静けさを取り戻す…
私達は、夢から覚めた静かな町を後にした…
「今回は、思ってた以上にたくさん売れましたね!」
クロワが明るい笑顔でそう言った。
シャトラン開催中は、市は客達がゆっくりと見て回る暇がないほどに大勢の人々で賑わっていた。
クロワの薬も飛ぶように売れ、主に私が店番をして、クロワはその間に薬草を採りに行ったり、薬の調合をしていた。
「これだけあれば、当分の路銀には事欠きませんね。
これもすべてはシャトランのおかげです!」
「そうですね。
こうなったら、私達もシャトランに敬意を表してルールを覚えないといけませんね。」
「えっ!では、ボードと駒を買って来なくては…」
「冗談ですよ。
私はどうもああいう頭を使うゲームには向いていないようです。
ルールの貼り紙を見ても、ちんぷんかんぷんでしたよ。
けっこう難しいものなのですね。」
「シャトランのようなゲームを楽しむには、相当に緻密な神経が必要みたいですね。」
「そう考えると、覇者のマクシムという人は、すごいですね。
十年もの間、王者の座を守り続けたのですから。」
「一体どんな方なのかしら?
薬売りをしていたせいで、結局、試合を見ることは出来ませんでしたね。」
「そうですね。
私が考えるには…神経質なインテリタイプじゃないかと思います。」
「インテリタイプ…そうかもしれませんね。
そういえば、対戦者のラザールさんという方は、たいそう人気のある方のようでしたが。」
「ご婦人達が騒いでおられるのを小耳に挟んだんですが、若くてとてもハンサムな方らしいですよ。」
「そうなんですか。
じゃあ、女性達はきっとラザールさんを応援されてたんでしょうね。」
「そういう方が相手では、マクシムさんもやりにくかったでしょうね。」
町は昨日までの賑わいが嘘のように、ひっそりとしていた。
もうほとんどの者が町を離れたようだ。
おそらく、この町はいつもはこんな感じなのだろう。
シャトランの大会が開催される時だけ、この町は活気付く。
年に一度だけ、十日の間だけ違う町に変わるのだ。
そして、その期間が過ぎ去ると、町はまた静けさを取り戻す…
私達は、夢から覚めた静かな町を後にした…
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる