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ルカ(聖夜月ルカ)

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027 : 月の船

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どうやって帰ってきたのかもわからない。

私が家に戻った時には、空が白み始めていた。
家に着くなり私は酒の瓶に口を付け、次々と酒瓶を空にしていった。



(どうやって死のう…
やはり、あの湖にでも行くか…)







「マクシム!起きて!マクシム!」

私は身体を揺さぶられ、目が覚めた。

「ん……」

だんだんとはっきりしてくる意識の中で、目に飛込んで来たのは妻、セリスの顔だった。
その数歩後ろにいるのは、娘のアニー。



「セリス!アニー!!
お前達…戻ったのか?!」

「別に帰ってきたわけじゃないわ…
あなたが会場に現れないから、皆、心配してて、それで仕方なく呼びに来たのよ。」

セリスは私の言う「戻った」を私の意図とは違う解釈をしたようだ。
しかし、そんなことはどうでも良いことだ。

お前達が戻ってきてくれただけで十分だ…!!



「あなた、何をぼーっとしているの?
早く、会場へ向かわないと…!」

「あ、すまん…
……会場…?
何の会場なんだ?」

「あなた、飲みすぎて忘れてしまったの?!呆れたわね…
今日は、シャトランの決勝戦じゃないの」

「何を言ってる…
決勝戦はもう終わったじゃないか。
私が優勝し、覇者になった…」

「マクシム…あなた、そんな夢を見てたのね…
良い?よく聞いて。
決勝戦は今日…あなたはまだ勝っても負けてもいないわ…」

「まさか……」



妻の言葉に私は呆然としてしまった。
決勝戦は今日…?
では…あれはすべて夢だったというのか?
あんな鮮明な夢があるものなのか?

しかし、それなら、説明はつく…!



「そうだ!セリス!おやじやおふくろはどうしてる?無事か?」

「え…えぇ…さっき、お二人とも会場にみえてたわ。
一体、どうしたの?」

「……そうか…」

ほっとした。 
 心の底から安堵した。

そうだ…
きっと、私は悪い夢を見ていたんだ…
とても複雑でリアルな夢を…




しかし…

もしも、そうではなかったとしたら…

あの月の船が…月の女神との出来事が夢ではなかったとしたら…

今日、私が勝利すればセリスはいなくなるのか?
アニーも、そして両親も…


 
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