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ルカ(聖夜月ルカ)

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026 : 覇者の心

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それだけですめばまだ良かったのだが、毎日の不安やイライラを忘れるため、私は今まで飲む事のなかったアルコールに手を出してしまった。
アルコールが入ると私の性格は凶暴性を増すようで、私は大声を出して暴れたり妻や娘に罵声を浴びせたり時には手をあげることもあった。

もちろん、そんなことはしたくてやっているわけではなかったのだが、どうしても止められなかったのだ…

それが原因で家族との仲もぎくしゃくしていった。

 以前はあんなにも私を応援してくれていた妻や娘も、今は隣町の実家に身を寄せている。

仕事もついにクビになってしまった。

 情けないことに今の私は年老いた両親の世話になりながら、細々と生きている状態だ。

しかし…こんな生活も今年で終わりだ…

私もいいかげん疲れてきた。 
 限界は近い…

昔はあんなに楽しかったシャトランが、最近では重石のように感じられる。

今年さえなんとか勝ち越せば、私は十連覇という後世に残る偉業を成し遂げることが出来るのだ。

私の名前は偉大な覇者として、ずっと語り継がれることになるのだ。

そうなったら、もうシャトランはやめよう…

そして、新しい職を探し、妻と子を呼び戻し、やり直すつもりだ。

なんなら新しい土地へ移っても良い。

新しい土地で新しい人生をやり直すのだ。

そのためにも、私はなにがなんでも勝たなければならない…!

シャトランへの未練を断ち切るためにも、あのラザールに負けるわけにはいかないのだ!



しかし、そんな想いとは裏腹に、ラザールをうちまかす秘策は思い付かなかった。

決定戦までもう日がないというのに…


私はもう一度、本棚の前に立った。
 何度も何度も読み返した本…
何か役に立つ情報はないか?忘れてることはないか?

私はがさがさと本棚をあさった。
その時、本棚から一冊の本が落ちた。
 童話の本だった

今ではずいぶんと女らしくなった娘がまだ幼い頃に読んでいた本だろう。

昔はあんなに私になついていたのに、最近は町で出会っても避けるように逃げ去ってしまう娘…
ずいぶんと嫌われたものだ…



私はその本を手にとった。 

 
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