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026 : 覇者の心
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最高ランクの大会で優勝した時からは、私は別人になったような気さえした。
特に、妻の家族の豹変ぶりには驚かされた。
これといって取り柄のない私のことを、妻の家族は今まで内心では馬鹿にしていたと思うのだが、妻に対して「おまえは男を見る目がある」「世界一の幸せ者だ」とまで言うようになったのだ。
どこへ行っても見も知らぬ人々から声をかけられ、シャトランの同好会のようなものの集まりにもよく招かれるようになった。
花や野菜や果物を持って来てくれる人もいた。
シャトランのおかげで、私は生まれ変わったような気分だった。
自分の心の奥底に渦巻いていたコンプレックスのようなものも薄らいだ。
私はなにも取り柄のない人間等ではなかった。
ただ、自分の才能に気付いていなかっただけなのだ…
そう感じた。
それからも私は順調に勝ち続け、今までジャン=リュックという男が持っていた五連勝の記録に並んだ。
それまでの対戦では、特に苦戦したこともなかった。
いける…!
これなら、ジャン=リュックの記録どころか十連勝も楽なものだ。
私はシャトラン最高の覇者となるのだ…!
そう確信しはじめた時に現れたのがラザールだったのだ。
私より一回り近くも年下のラザールは、つい二年程前に隣町に越して来たばかりの男だった。
若いだけではない。
端正な顔立ちに誰からも愛されるその笑顔…
長身にすらりと伸びた手足…
実家はたいそうな資産家だとも聞いた。
彼は、隣町に越してきてからシャトランを知り、そして瞬く間にここまでの腕になったのだ。
なにもかも持っているくせに、この上にまだシャトランの王座を手に入れようというのか…
そんなこと、許してなるものか…!
私は、逆恨みにも似た感情を胸に抱き、それからは仕事もそっちのけでシャトランに打ち込んだ。
頭の中にはシャトランしかなかった。
家族との会話もどんどん少なくなっていった。
そんな暇があれば、少しでもシャトランの勉強をしたいと思っていた。
特に、妻の家族の豹変ぶりには驚かされた。
これといって取り柄のない私のことを、妻の家族は今まで内心では馬鹿にしていたと思うのだが、妻に対して「おまえは男を見る目がある」「世界一の幸せ者だ」とまで言うようになったのだ。
どこへ行っても見も知らぬ人々から声をかけられ、シャトランの同好会のようなものの集まりにもよく招かれるようになった。
花や野菜や果物を持って来てくれる人もいた。
シャトランのおかげで、私は生まれ変わったような気分だった。
自分の心の奥底に渦巻いていたコンプレックスのようなものも薄らいだ。
私はなにも取り柄のない人間等ではなかった。
ただ、自分の才能に気付いていなかっただけなのだ…
そう感じた。
それからも私は順調に勝ち続け、今までジャン=リュックという男が持っていた五連勝の記録に並んだ。
それまでの対戦では、特に苦戦したこともなかった。
いける…!
これなら、ジャン=リュックの記録どころか十連勝も楽なものだ。
私はシャトラン最高の覇者となるのだ…!
そう確信しはじめた時に現れたのがラザールだったのだ。
私より一回り近くも年下のラザールは、つい二年程前に隣町に越して来たばかりの男だった。
若いだけではない。
端正な顔立ちに誰からも愛されるその笑顔…
長身にすらりと伸びた手足…
実家はたいそうな資産家だとも聞いた。
彼は、隣町に越してきてからシャトランを知り、そして瞬く間にここまでの腕になったのだ。
なにもかも持っているくせに、この上にまだシャトランの王座を手に入れようというのか…
そんなこと、許してなるものか…!
私は、逆恨みにも似た感情を胸に抱き、それからは仕事もそっちのけでシャトランに打ち込んだ。
頭の中にはシャトランしかなかった。
家族との会話もどんどん少なくなっていった。
そんな暇があれば、少しでもシャトランの勉強をしたいと思っていた。
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