246 / 641
024 : 贖罪
9
しおりを挟む
「すべては私のせいなのです。
家族が死んだのも、村が甚大な被害を被ったのも、すべては私があの水晶玉を割ってしまったせいなのです。
私はその後、村を出ました。
亡くなった人はもう戻りません。
しかし、私がこの村を離れたら、もしかしたらこれ以上の災いはもう起こらないかもしれない…そう考えたのです。
私は一生誰とも関わらず、そして与えられた災難や苦痛はどれだけでも受けよう。
そう考えたのです。
それが、私に出来る精一杯の罪滅ぼしだと…」
「そうだったのですか…
だから、あなたはどんなに具合が悪くとも薬は飲まないと決めたのですね。」
「その通りです。」
「ケヴィンさん…失礼を承知で言いますが、あなたは間違っている。
確かに、八つの子供だったあなたに起こった出来事は不幸なことだったと思います。
真実を言えなかった気持ちも、わかります。
許されることではありませんが、子供なら仕方のないことだったのかもしれません。
しかし、今のあなたなら話せるはずだ。
あなたが最初にやらなくてはならないことは、自分に罰を与えることではなく、旅の男性に謝罪すること…出来るなら、今からでも真実を話しその人の濡衣を晴らすことなのではありませんか?」
「マルタンさん…」
ケヴィンは酷く動揺している様子だった。
少し言い過ぎてしまっただろうか…
「偉そうなことを言ってすみません。
私もそんな偉そうなことを言える人間ではないのですが、正論なんてものは自分のことを棚にあげないと言えるものではありませんから…
許してください。」
「……いえ…あなたのおっしゃる通りです。
私はなぜこれまでそのことに気が付かなかったのだろう…
私は、自分に罰を与えることばかり考えていました。
そうやって、私は自分の心の重石を軽くしようとしていたのですね。
恥ずかしいことだ…
マルタンさん…あなたのおかげで私は目が覚めました!
ありがとうございます。
そうだ…そうすべきだったんだ……近いうちにあの村へ行って、あの方の行方を探してみようと思います。」
「故郷の村へ…?
旅人がどのくらいの刑期をくらったのかはわかりませんが、もうずいぶんと時が経っているのでしょう?」
「もうかれこれ三十年程になります。」
「それではいくらなんでも村にはもういらっしゃらないだろうが、探す手がかりとなると、まずは村しかありませんね。
ケヴィンさん!私達もお供しますよ。」
「そんなご迷惑をおかけしては…」
家族が死んだのも、村が甚大な被害を被ったのも、すべては私があの水晶玉を割ってしまったせいなのです。
私はその後、村を出ました。
亡くなった人はもう戻りません。
しかし、私がこの村を離れたら、もしかしたらこれ以上の災いはもう起こらないかもしれない…そう考えたのです。
私は一生誰とも関わらず、そして与えられた災難や苦痛はどれだけでも受けよう。
そう考えたのです。
それが、私に出来る精一杯の罪滅ぼしだと…」
「そうだったのですか…
だから、あなたはどんなに具合が悪くとも薬は飲まないと決めたのですね。」
「その通りです。」
「ケヴィンさん…失礼を承知で言いますが、あなたは間違っている。
確かに、八つの子供だったあなたに起こった出来事は不幸なことだったと思います。
真実を言えなかった気持ちも、わかります。
許されることではありませんが、子供なら仕方のないことだったのかもしれません。
しかし、今のあなたなら話せるはずだ。
あなたが最初にやらなくてはならないことは、自分に罰を与えることではなく、旅の男性に謝罪すること…出来るなら、今からでも真実を話しその人の濡衣を晴らすことなのではありませんか?」
「マルタンさん…」
ケヴィンは酷く動揺している様子だった。
少し言い過ぎてしまっただろうか…
「偉そうなことを言ってすみません。
私もそんな偉そうなことを言える人間ではないのですが、正論なんてものは自分のことを棚にあげないと言えるものではありませんから…
許してください。」
「……いえ…あなたのおっしゃる通りです。
私はなぜこれまでそのことに気が付かなかったのだろう…
私は、自分に罰を与えることばかり考えていました。
そうやって、私は自分の心の重石を軽くしようとしていたのですね。
恥ずかしいことだ…
マルタンさん…あなたのおかげで私は目が覚めました!
ありがとうございます。
そうだ…そうすべきだったんだ……近いうちにあの村へ行って、あの方の行方を探してみようと思います。」
「故郷の村へ…?
旅人がどのくらいの刑期をくらったのかはわかりませんが、もうずいぶんと時が経っているのでしょう?」
「もうかれこれ三十年程になります。」
「それではいくらなんでも村にはもういらっしゃらないだろうが、探す手がかりとなると、まずは村しかありませんね。
ケヴィンさん!私達もお供しますよ。」
「そんなご迷惑をおかけしては…」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を
榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。
16歳。
ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。
しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。
まったくふざけた話である。
まあだが別にいいさ。
何故なら――
俺は超学習能力が高い天才だから。
異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。
そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。
これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。
移転した俺は欲しい物が思えば手に入る能力でスローライフするという計画を立てる
みなと劉
ファンタジー
「世界広しといえども転移そうそう池にポチャンと落ちるのは俺くらいなもんよ!」
濡れた身体を池から出してこれからどうしようと思い
「あー、薪があればな」
と思ったら
薪が出てきた。
「はい?……火があればな」
薪に火がついた。
「うわ!?」
どういうことだ?
どうやら俺の能力は欲しいと思った事や願ったことが叶う能力の様だった。
これはいいと思い俺はこの能力を使ってスローライフを送る計画を立てるのであった。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる