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023 : 華燭の典
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いろいろと準備をしているうちに、時はあっという間に過ぎ去り、ついに、結婚式の前夜となった。
「イシドール、ちょっと私の部屋に来て。」
マリアンヌがイシドールを部屋に招いた。
「ほら、見て!
クロワさんがこんなに素敵なドレスを縫ってくれたわ。
私…明日とうとうマルタンさんの花嫁になるのね…
今でもまだ信じられないわ。」
「良かったじゃないか…
綺麗だな…
きっと、マリアンヌにとてもよく似合うと思うよ…」
「心にもないお世辞をいわないで。
私のことを女だなんて思ったこともないんでしょ。」
イシドールは俯き、しばらく何かを考えるように沈黙し、そしてようやく口を開いた。
「……あれは…嘘だ…」
「え……?」
「ここで初めて君を見た時…なんて綺麗な人だろうと思った…
正直言って見とれてしまった…」
「……う、嘘ばっかり…」
「嘘じゃない。
そして、君があのマリアンヌだとわかった時…とても嬉しかった…」
「どうして?
イシドール、どうして今になってそんなこと言うの!?」
マリアンヌは感情的に声を上げる。
「……最後に本当の事を言っておきたかったから。」
「最後?…どういうこと?」
「結婚式が終わったら、俺はクロワさんと旅に出るつもりだ。」
「そんな!どうして?!
これからもみんなで仲良く暮らしていきましょうよ!」
「それは無理だろ…」
「どうして?
部屋が狭いのなら、近くに家を借りれば良いじゃない!」
イシドールはゆっくりと首を振る。
「そういう問題じゃない…
元々、俺達はずっとここにいるつもりじゃなかった。
でも、いろんなことがあって結果的に長居をしてしまっただけなんだ。
君の結婚が旅立つための良い機会になったと思ってる…」
「じゃあ、やめる!
私、マルタンさんとの結婚をやめるわ!
だから…行かないで!
ずっとここにいて!」
マリアンヌは今にも泣き出しそうな顔をして、イシドールの両腕を掴んだ。
「今更そんなこと出来るわけがないじゃないか…
そんなことになったら、マルタンさんがどんなに悲しむことか…
結婚式はもう明日なんだぜ… 」
「でも…私…
本当はあんたのことが好きだったの…
浜辺に行った時も、本当はそのことを伝えるつもりで…でも、言えなかった…素直になれなかった…」
「……本当なのか!
でも、君はマルタンさんのことを……」
「そのことなら、前にも言ったでしょう?
マルタンさんの事は好きだけど、それは恋愛感情じゃない…
家族のような…兄さんみたいな気持ちだって。
でも、あんたのことは…それとは違う…」
「ありがとう…俺…そんなこと言ってもらえて本当に嬉しいよ…
……俺もマリアンヌのことが好きだった…」
「嘘…!?」
「嘘じゃない…
多分…初めて会った時から、ずっと好きだった…」
「そ、そんな…
……でも、あんたは私のことは女として見た事がないだとか、マルタンさんにプロポーズされた時だって、おめでとうってあんなにあっさり言って…」
「俺……ずっと昔から決めていたことがあるんだ。
俺は、死ぬまで誰のことも好きにはならないし、もちろん結婚もしないと。」
いろいろと準備をしているうちに、時はあっという間に過ぎ去り、ついに、結婚式の前夜となった。
「イシドール、ちょっと私の部屋に来て。」
マリアンヌがイシドールを部屋に招いた。
「ほら、見て!
クロワさんがこんなに素敵なドレスを縫ってくれたわ。
私…明日とうとうマルタンさんの花嫁になるのね…
今でもまだ信じられないわ。」
「良かったじゃないか…
綺麗だな…
きっと、マリアンヌにとてもよく似合うと思うよ…」
「心にもないお世辞をいわないで。
私のことを女だなんて思ったこともないんでしょ。」
イシドールは俯き、しばらく何かを考えるように沈黙し、そしてようやく口を開いた。
「……あれは…嘘だ…」
「え……?」
「ここで初めて君を見た時…なんて綺麗な人だろうと思った…
正直言って見とれてしまった…」
「……う、嘘ばっかり…」
「嘘じゃない。
そして、君があのマリアンヌだとわかった時…とても嬉しかった…」
「どうして?
イシドール、どうして今になってそんなこと言うの!?」
マリアンヌは感情的に声を上げる。
「……最後に本当の事を言っておきたかったから。」
「最後?…どういうこと?」
「結婚式が終わったら、俺はクロワさんと旅に出るつもりだ。」
「そんな!どうして?!
これからもみんなで仲良く暮らしていきましょうよ!」
「それは無理だろ…」
「どうして?
部屋が狭いのなら、近くに家を借りれば良いじゃない!」
イシドールはゆっくりと首を振る。
「そういう問題じゃない…
元々、俺達はずっとここにいるつもりじゃなかった。
でも、いろんなことがあって結果的に長居をしてしまっただけなんだ。
君の結婚が旅立つための良い機会になったと思ってる…」
「じゃあ、やめる!
私、マルタンさんとの結婚をやめるわ!
だから…行かないで!
ずっとここにいて!」
マリアンヌは今にも泣き出しそうな顔をして、イシドールの両腕を掴んだ。
「今更そんなこと出来るわけがないじゃないか…
そんなことになったら、マルタンさんがどんなに悲しむことか…
結婚式はもう明日なんだぜ… 」
「でも…私…
本当はあんたのことが好きだったの…
浜辺に行った時も、本当はそのことを伝えるつもりで…でも、言えなかった…素直になれなかった…」
「……本当なのか!
でも、君はマルタンさんのことを……」
「そのことなら、前にも言ったでしょう?
マルタンさんの事は好きだけど、それは恋愛感情じゃない…
家族のような…兄さんみたいな気持ちだって。
でも、あんたのことは…それとは違う…」
「ありがとう…俺…そんなこと言ってもらえて本当に嬉しいよ…
……俺もマリアンヌのことが好きだった…」
「嘘…!?」
「嘘じゃない…
多分…初めて会った時から、ずっと好きだった…」
「そ、そんな…
……でも、あんたは私のことは女として見た事がないだとか、マルタンさんにプロポーズされた時だって、おめでとうってあんなにあっさり言って…」
「俺……ずっと昔から決めていたことがあるんだ。
俺は、死ぬまで誰のことも好きにはならないし、もちろん結婚もしないと。」
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