お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
219 / 641
022 : 来客

21

しおりを挟む
「私…その話を聞いてたらとても切なくなって…
イシドールを抱き締めてあげたい…
イシドールの力になってあげたいって思ったの。
でも、私はもうあの頃の私とは違う。
 私には、もう昔のようにイシドールをかばってあげることも支えてあげることも出来ない…
こんな身体だもの…
そう思ったらとても悲しくて…そしたら父さんが心配して…」

「そうだったのか…
でも、誰かを支えるために必要なのは身体じゃない。
気持ちだよ…
イシドールを想う気持ち…愛する気持ちがあれば、支えになれるさ。」

「そんなの無理よ…
私はイシドールより三つも年上だし、こんな身体だし…
彼は私の支えなんて、きっと欲しがらないわ。」

「年なんてたいした問題じゃない。
……そうか、君はイシドールのことを愛しているんだな。」

「違う!そんなんじゃないわ!
私は…子供の頃のように彼を支えたいと思ってるだけ…
私なんか…誰かを好きになる資格なんてないんだもの…」

「バカな事をいうもんじゃない、マリアンヌ。
人を好きになる資格のない人間なんてどこにもいないんだよ。
マリアンヌ…勇気を出して、彼に君の気持ちを伝えてみたらどうだ?」

「マルタンさん…私…」

私にすがりつくマリアンヌを抱き締めた時…部屋のドアが開いた。



「……あんたら、やっぱり…!!」

イシドールは、そう言い残すと家を出ていった。



「イシドール!!」

「どうしたの?
イシドールはなぜ?」 

「……彼は、私と君の仲を誤解してしまったようだ…」

「そんな馬鹿な…!マルタンさん、私をイシドールの所へ連れていって下さい!」



私はすぐにマリアンヌを背負って外へ飛び出し、イシドールの後を追った。
しかし、彼の姿はなかなかみつからなかった。



 「そうだわ、マルタンさん!海の方に行ってみましょう…!」

そこで私達は浜辺に一人で座るイシドールをみつけた。



「イシドール!」

マリアンヌの声に振り向くと、彼は走り出そうとした。



「待ってくれ!話を聞いてくれ。」

「話なんか聞きたくないよ!」

「あなた、本当に早とちりね!!」

「…なんだよ、早とちりって…」

「……今日、父さんから先日の話を聞いたわ。
私…あなたの気持ちを考えたらなんだかすごく動揺してしまって…
それで、どうしようもなくなってマルタンさんに話を聞いてもらってただけなのよ。」

「…嘘だ…そんなこと…」 
しおりを挟む

処理中です...