お題小説

022 ： 来客

１１

やがて、日が沈みイシドールとゴーチェが港から帰って来た。



「クロワさん、砂持ってきたぜ。ここに置いとくな。
そんなことより、皆、聞いてくれ！俺、明日から港で働くことになったんだ！！」

「まぁ、本当なの？！」

「本当さ、同僚の一人がちょうどやめちまってな。
親方がこいつを見て働かねぇかと声をかけてくれたんだ。」

「俺…仕事なんかしたことないけど、おじさんも一緒だしさ。
マリアンヌも頑張ってるんだし俺も頑張るよ！
 三人も居候させてもらってるんだもんな。稼がないとな！」

「まぁ、イシドールったら急に頼もしくなったんじゃない！？
よろしく頼むわよ！」

 冗談交じりにそう言ったクロワは、とても嬉しそうだった。



「あぁ、任せといてくれ！
俺、たくさん稼いで来るから！
ところで、マリアンヌ…今日のトレーニングはどうだった？」

「ええ…まだまだだけど…でも、頑張るわ！」

「最初からうまく出来る奴なんていないからな！
焦る事はないさ、頑張れよ！」

「イシドールったら、本当に変わったわね！
まるで、お兄さんみたいなこと言って…」

「いちいちうるさいよ！
そんなことばっかり言ってたら嫁の貰い手がなくなるぜ！」

「まぁ～！イシドールったら！」

「おっ！今夜はごちそうだな！
早く、食べようじゃないか！」



台所には皆の幸せな会話と笑い声が飛び交っていた。
つい先日までのあの火の消えたような雰囲気とはまるで違う…

変化はそれだけではなかった。
あの食の細いマリアンヌが次から次に料理を口に運んでいたのだ。



「マリアンヌ…おまえ、すごい食欲だな。」

「運動すればおなかが減るのは当然よね。
それと、これも毎日飲んでね。ちょっと苦いけど、胃腸の働きを良くする薬草なの。
イシドールもいつも飲んでるのよ。」

夜になると、クロワはマリアンヌの身体をマッサージでほぐした。



「明日は筋肉痛になるかもしれないわね。」

クロワとマリアンヌは顔を見合わせて微笑んだ。