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022 : 来客
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「イシドール、さっき、ゴーチェさんのことを『りんごのおじさん』って呼んでたよな?
あれはどういう意味なんだ?」
「あぁ、あれか。
たいしたことじゃないんだけどな、昔、マリアンヌの家にはりんごの木があって、おじさんはよくりんごをくれたんだ。
おばさんは美味しいアップルパイを焼いてくれた…」
「優しい人達だったんだな。」
「そうさ、俺達によくしてくれたのは後にも先にもおじさんの家族だけだった…
だけど、おじさん達があの町にいたのはほんの短い間だったんだ。」
「そうだったのか…
しかし、君は意外と記憶力が良いんだな。
まだ五つや六つの頃のことを覚えてるなんて、すごいじゃないか。
私は大人になってからのこともすっかり忘れているというのに…」
イシドールは一瞬とまどい、そして笑った。
「マルタンさんの冗談なんて、俺、はじめて聞いたぜ。」
私はそんなにいつもくそ真面目な話ばかりしていたのだろうか?
「…多分、嬉しかったんだろうな。
あの日以来、ずっと君とクロワさんを探していたが何もみつからないままで…
内心はかなりこたえていたのだと思う…
それに、今日はあのマリアンヌさんとあんなにしゃべることが出来たからな。」
「…心配かけたな…
でも、あんたはもうここに一ヶ月近くいたわけだろう?
その間、マリアンヌとはしゃべらなかったのかい?」
「あぁ、彼女は必要なこと以外はほとんどしゃべらなかったよ。
ゴーチェさんともそれほどしゃべることはなく、いつも一人で部屋に閉じ籠っていた…」
「本当かい?
…あのマリアンヌが?
…信じられないな。子供の頃はあんなにおしゃべりで活発だったのに…」
「そうか…
また、子供の頃の彼女に戻れると良いな…」
「…そうだな、きっと戻れるさ…」
「イシドール、さっき、ゴーチェさんのことを『りんごのおじさん』って呼んでたよな?
あれはどういう意味なんだ?」
「あぁ、あれか。
たいしたことじゃないんだけどな、昔、マリアンヌの家にはりんごの木があって、おじさんはよくりんごをくれたんだ。
おばさんは美味しいアップルパイを焼いてくれた…」
「優しい人達だったんだな。」
「そうさ、俺達によくしてくれたのは後にも先にもおじさんの家族だけだった…
だけど、おじさん達があの町にいたのはほんの短い間だったんだ。」
「そうだったのか…
しかし、君は意外と記憶力が良いんだな。
まだ五つや六つの頃のことを覚えてるなんて、すごいじゃないか。
私は大人になってからのこともすっかり忘れているというのに…」
イシドールは一瞬とまどい、そして笑った。
「マルタンさんの冗談なんて、俺、はじめて聞いたぜ。」
私はそんなにいつもくそ真面目な話ばかりしていたのだろうか?
「…多分、嬉しかったんだろうな。
あの日以来、ずっと君とクロワさんを探していたが何もみつからないままで…
内心はかなりこたえていたのだと思う…
それに、今日はあのマリアンヌさんとあんなにしゃべることが出来たからな。」
「…心配かけたな…
でも、あんたはもうここに一ヶ月近くいたわけだろう?
その間、マリアンヌとはしゃべらなかったのかい?」
「あぁ、彼女は必要なこと以外はほとんどしゃべらなかったよ。
ゴーチェさんともそれほどしゃべることはなく、いつも一人で部屋に閉じ籠っていた…」
「本当かい?
…あのマリアンヌが?
…信じられないな。子供の頃はあんなにおしゃべりで活発だったのに…」
「そうか…
また、子供の頃の彼女に戻れると良いな…」
「…そうだな、きっと戻れるさ…」
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