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022 : 来客
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相変わらず私は毎日町を歩き、クロワとイシドールの痕跡を探し求めていた。
当然、盗賊団のアジトらしき場所も探したのだが、どちらもみつからないままにもう三週間もの時間が流れていた。
私は、クロワがすでに売られてしまったのではないかと心配したが、今月はそれらしき船が港に着いた事実はないということがわかり、ほっと胸をなでおろした。
と、なれば、クロワもイシドールもやはりまだこの町にいるはずだ。
しかし、こんなに探してもみつからないのでは、これ以上どうやって探せば良いというのか…
私はその日よほど落胆した顔でもしていたのだろうか。
今までほとんど話をすることもなかったマリアンヌが私に声をかけてきたのだ。
「今日も何もみつからなかったのですか…」
「あぁ、マリアンヌさん…
そうなんですよ。
今日も目新しい情報は皆無でした…」
「……マルタンさん、なぜ、そんなにも一生懸命になられるのです?
二人はただの旅のお仲間なんでしょう?」
「…実は、私はクロワさんには命を救われているのです。」
「……命を?!」
「ええ…
私は瀕死の所をクロワさんに救われたのです。」
「なぜそんなことに?」
「それが…わからないのです。」
「わからない…??どういうことですか?」
マリアンヌはどこか不機嫌そうに、問い続けた。
「ええ…私はクロワさんに助けていただいた以前のことは…まるで記憶がないのです。
私は、頭に傷を負っていたようです。
おそらくはそれが原因だろうと…」
「記憶がない…?何もかも…ですか?」
「……そうです。私は自分の名前すらも思い出せないのです。
この『マルタン』という名前もクロワさんがつけてくれたものなんですよ。」
「……そうだったんですか…
マルタンさんにはそんなご事情が…」
「クロワさんのおかげで怪我はすっかり良くなりましたし、私は傍目にはごく普通の人間に見えていることでしょう。
しかし、誰しもが多かれ少なかれ、なんらかの事情を抱えているのかもしれませんね。」
「………そういうものでしょうか。」
相変わらず私は毎日町を歩き、クロワとイシドールの痕跡を探し求めていた。
当然、盗賊団のアジトらしき場所も探したのだが、どちらもみつからないままにもう三週間もの時間が流れていた。
私は、クロワがすでに売られてしまったのではないかと心配したが、今月はそれらしき船が港に着いた事実はないということがわかり、ほっと胸をなでおろした。
と、なれば、クロワもイシドールもやはりまだこの町にいるはずだ。
しかし、こんなに探してもみつからないのでは、これ以上どうやって探せば良いというのか…
私はその日よほど落胆した顔でもしていたのだろうか。
今までほとんど話をすることもなかったマリアンヌが私に声をかけてきたのだ。
「今日も何もみつからなかったのですか…」
「あぁ、マリアンヌさん…
そうなんですよ。
今日も目新しい情報は皆無でした…」
「……マルタンさん、なぜ、そんなにも一生懸命になられるのです?
二人はただの旅のお仲間なんでしょう?」
「…実は、私はクロワさんには命を救われているのです。」
「……命を?!」
「ええ…
私は瀕死の所をクロワさんに救われたのです。」
「なぜそんなことに?」
「それが…わからないのです。」
「わからない…??どういうことですか?」
マリアンヌはどこか不機嫌そうに、問い続けた。
「ええ…私はクロワさんに助けていただいた以前のことは…まるで記憶がないのです。
私は、頭に傷を負っていたようです。
おそらくはそれが原因だろうと…」
「記憶がない…?何もかも…ですか?」
「……そうです。私は自分の名前すらも思い出せないのです。
この『マルタン』という名前もクロワさんがつけてくれたものなんですよ。」
「……そうだったんですか…
マルタンさんにはそんなご事情が…」
「クロワさんのおかげで怪我はすっかり良くなりましたし、私は傍目にはごく普通の人間に見えていることでしょう。
しかし、誰しもが多かれ少なかれ、なんらかの事情を抱えているのかもしれませんね。」
「………そういうものでしょうか。」
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