お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

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016 : 迷宮都市

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私は町の見取り図を見て思わず息を飲んだ。
その町の様子もだが、その見事な見取り図に感心してしまったのだ。

「あなたは絵描きなんですか?
なんて精巧な地図だ…」

「絵は好きで描いてただけだ。
俺は細かい作業が昔から好きでな。
ま、そんなことはどうでも良い。
とにかくまずはこれを見て、町のことをよく知ることだ。
そして、それらしき場所を虱潰しにあたっていくしかないな。
俺も手伝ってやりたいが仕事があってな。
あんたは明るいうちに探して、そして暗くなったらここに戻ってきな。
暗くなってからうろうろしてたら、今度はあんたの身が危険だからな。」

「良いんですか?お世話になってしまって。」

「乗り掛かった船だ、仕方ないさ。」

「ありがとうございます。ゴーチェさん。」

「それからな、奴ら、女を売りに行くのは決まって月末だ。
だから、月末までにはなんとかしないとな。
幸い、日にちはまだ十分ある。
頑張んな!」



次の日から、私はゴーチェの描いた見取り図を頼りに、ひたすら町を歩いた。

悪党のアジトらしきものをみつけるには、まず、その建物に出入りする者を調べなければならない。
私は毎朝早くにでかけ、町の構造と家に住む者を出来る限りチェックし、暗くなる前にゴーチェの家に戻るという生活を続けた。

気が付くと、クロワ達と別れてからすでに十日が経ち、私は町の内部のことがかなりわかるようになっていた。 
 
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