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013 : 背信者
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俺が構えたドラゴンの長剣が、ピエールの背中を斬り刻む。
一本、二本、三本…
ピエールの背中には深い三本の傷が刻まれた。
「うっ…ヨ…ヨシムさん…なぜ…こんなことを!」
「おまえはとことんお人よしだな。
俺はおまえの娘がどうなろうと、そんなこと、知ったこっちゃない。
俺がほしいのはこいつの心臓だけさ。」
「そ…そんな…
た、たのむ…娘だけは…娘だけは…」
……ピエールは、そう俺に懇願しながら息耐えた。
「父さん…!!」
「気の毒だがおまえも生かしちゃおけねぇ。
いずれにせよ、おまえは今日までの命だったんだ。
死に方が変わっただけのことだ、悪く思うなよ。」
俺は籠越しにジャンヌの腹を貫いた。
ジャンヌの絶叫があたりに響き渡った…
婆さんの時はあんなに恐ろしかったものが、今はこんなにも平気に出来ることが自分でも不思議だった。
ふと見ると、黒いローブの男が近くに来ていた。
「待ってろよ。今、持っていくからな。」
そう声をかけた瞬間のことだった。
滝壺の底から恐ろしい勢いで水が吹き出し、首のない竜が起き上がりのたうったのを見た気がした。
それが俺の最後の記憶だ…
押し寄せる水に流され、俺も黒いローブの男も一瞬にして岩に叩き付けられ、そして命を失ったのだと思う…
面白おかしく遊んで暮らすという俺の夢は、あと一歩の所で儚く散った…
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
一本、二本、三本…
ピエールの背中には深い三本の傷が刻まれた。
「うっ…ヨ…ヨシムさん…なぜ…こんなことを!」
「おまえはとことんお人よしだな。
俺はおまえの娘がどうなろうと、そんなこと、知ったこっちゃない。
俺がほしいのはこいつの心臓だけさ。」
「そ…そんな…
た、たのむ…娘だけは…娘だけは…」
……ピエールは、そう俺に懇願しながら息耐えた。
「父さん…!!」
「気の毒だがおまえも生かしちゃおけねぇ。
いずれにせよ、おまえは今日までの命だったんだ。
死に方が変わっただけのことだ、悪く思うなよ。」
俺は籠越しにジャンヌの腹を貫いた。
ジャンヌの絶叫があたりに響き渡った…
婆さんの時はあんなに恐ろしかったものが、今はこんなにも平気に出来ることが自分でも不思議だった。
ふと見ると、黒いローブの男が近くに来ていた。
「待ってろよ。今、持っていくからな。」
そう声をかけた瞬間のことだった。
滝壺の底から恐ろしい勢いで水が吹き出し、首のない竜が起き上がりのたうったのを見た気がした。
それが俺の最後の記憶だ…
押し寄せる水に流され、俺も黒いローブの男も一瞬にして岩に叩き付けられ、そして命を失ったのだと思う…
面白おかしく遊んで暮らすという俺の夢は、あと一歩の所で儚く散った…
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